第20話 天馬の迷い ページ22
本部からはどうやって帰ってきたのかよく覚えていない。
ただ本能のままに歩み出し、自分を行くべきところへと向かった。
着いたのは、Aの部屋だった。
よく見ると、障子からうっすらと蝋燭の灯りが漏れている。
襖を開いて見ると、やはりAは眠れずに起きていた。
眠るように促し、Aが布団の中に飛び込むと自分も腰を下ろす。
すると途端に眠気が襲ってきて、そこで記憶が途絶えた。
暗い闇の中で、自分にかけられた一枚の毛布の暖かさと、心地よい声が、胸の中でじんわりと溶けていった。
太陽すら顔を出してこない早朝、天馬はAよりも早く目を覚ました。
自分にかけられていた毛布の存在に気付き、安心そうに眠っているAの顔をみると、有馬の最後の言葉が脳裏をよぎった。
『今はまだ、殺さない。けれど、もしも僕等が戦っている時代に安倍晴明を救出できたなら、葛城Aは僕等にとっての次の脅威になる………………。そのときは、分からないよ。』
天馬はまた、拳を強く握りしめた。
自分はどうすれば良いのかと、心の中でずっと考えていた。
天馬は、Aの隣に横たわり、Aの顔をずっと見つめていた。そしてまた、目を閉じた。
そして、一つの布団で目が覚めた今に至る。
着替えてくる、と言って部屋を出たAの姿が見えなくなると、天馬も布団から身を起こした。
そして天馬も自室に戻り、身支度を整える。
今日は禍野での任務があり、半日近く留守にしなければならない。
任務へ向かうとき、偶然Aのいる訓練室を通りかかった。
こちらに気付いたAがぱっと笑顔を見せ、頭を下げたのを見たとき、天馬の心はまたズキズキと押しつぶされる感触を覚えた。
そんな天馬の迷いにも気づかないAは、天馬に少しでも恩を返そうと、修行により一層力を入れるのだった。
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あとり - ありがとうございます!大変遅くなりましたが更新させていただきました! (2018年2月13日 0時) (レス) id: ce2f790ea1 (このIDを非表示/違反報告)
(* ´ ▽ ` *) - 続きはまだですか?とても面白いので、更新頑張ってください! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 18290c3fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ちっち - あとりさんこの小説大好きなので、頑張って更新してください! (2017年12月29日 9時) (レス) id: d069e4a0a4 (このIDを非表示/違反報告)
あとり - 夜実さん、すみませんでした!ご指摘ありがとうございます!気をつけます! (2017年3月30日 0時) (レス) id: 493c050031 (このIDを非表示/違反報告)
夜実 - 47なのに46になってますよ〜(このコメント消していいです) (2017年3月29日 23時) (レス) id: 180bd39056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あとり | 作成日時:2017年2月17日 7時