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ぐりぐりとその小さい頭が腰に押し付けられる。
そうか、彼は俺の腰元までしか身長がないのか。
それだけしかない小さな身体で、一体どれほどのものを背負っているのか。
知らぬ間に白に伸びていた手に、はっと我に返る。
「悟」
押し付けられた顔が、勢いよく持ち上がった。視線がかちりとあった時、胸に温かいものが広がる感じがした。
それを抑え込むように、俺は口を開く。
「俺には、才能もなければ、兄になる資格もない。あの日五条家を出たのも間違いだとは思わない。俺はいないことにして、悟が五条家を引き継ぐ。それが正解だ。俺は、悟の兄にはなれない」
今も尚腰にある腕の力が、僅かに強まった。
「悟の周りには優秀な人がたくさんいる。どうして俺に固執する?」
彼の青空の目に不満の色が灯ったのは、気のせいではないだろう。
「兄になるのに、資格も才能も必要ないだろ。お前は俺より早く産まれた。だから兄になるんだ。ならなきゃいけないんだ」
彼の顔には必死さがあった。どうしてそんなに一生懸命になるのか、俺には分からなかった。
「…それに、書物で読んだんだ。兄弟には確固たる絆があって、いつでも助け合わなきゃいけないって。それから、兄には弟を甘やかす義務があるんだぞ!」
五条家の次期当主として、長い間教育されてきたであろう悟にとって、今のような"絆”なんて発言は非現実的だった。少なくとも、俺はそう感じた。が、そんな思考は彼のえへへという笑い声が聞こえてきそうな顔によってかき消された。
さっきより確かな温かさが胸に広がったが、俺に無視することなんて出来なかった。
「悟」
ふわりと花が咲くように、天使が笑う。
まだ七歳そこらの幼い彼の必死さを跳ね除けるのは、俺にはいささか難しかった。そもそも五条家の長男であることには激しい抵抗を覚えるが、五条悟の兄であることは何も嫌ではなかった。彼と目が合う度に感じるこの胸の温度が何よりの証拠だろう。
そんな彼が、俺を求めてくれたように見えた。それが嬉しくないわけが無い。
どうしてだか分からないが、悟が俺を必要としている。なら、悟に俺が必要なくなるまで、近くにいようと思う。
それに、飽き性な彼だから、そんなに大きな問題にはならないんじゃないだろうか。彼が飽きてしまったなら、また大人しく日常に戻れば良い。
そう考えるAをよそに、Aにいえなかった悟の本音は、一人静かに悟が心に飼う闇に沈んでいった。
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砂漠 - エレナさん» ありがとうございます!そう言って頂けるととても励みになります(●︎´▽︎`●︎)これからも楽しみに思っていただけるよう頑張るので、ぜひ最後までお付き合いください、、、(_ _*)) (2022年4月2日 11時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
エレナ(プロフ) - この作品大好きです!続きが楽しみです! (2022年3月26日 21時) (レス) @page16 id: 806542db6b (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - お餅さん» まーたやりました。今日何回目ですか、私!!1個下のコメントはお餅さんへの返信です、、、失礼しました、、、お餅さん、コメントありがとうございました✨ (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - コメントありがとうございます!ご期待に添えるよう、更新も頑張っていきたいと思います٩(ˊᗜˋ*)و最後までお兄ちゃんを応援してあげてください(_ _*)) (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - あいすくりぃむとちょこれぃとさん» いや、私もタイトルとの温度差は感じていたんですよね、、、ですが地獄を見たというお言葉に笑ってしまいました😆最高の褒め言葉ありがとうございます!お兄ちゃんには幸せになって欲しいですね、、、頑張ります🔥 (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂漠 | 作成日時:2021年12月11日 11時