五条さん家のお兄ちゃん！ 続編【呪術廻戦】

64. ページ23

｢…まぁ、こんな感じです。なので俺は、今日から五条Aになる訳ですが、俺自身はなにも変わってないので前みたいに接して貰えれば…｣


｢…へぇ｣


また、彼らしくなかった。
でもそれもほんの一瞬のことで、くるりと背を向けた彼は、また陽気に高専内へ歩き出した。


｢A〜、はやくおいで。
Aが居なかった間、僕がAの任務を肩代わりしたんだ。これからはその埋め合わせに、とことん付き合ってもらうよ！｣


彼は口角をくいっとあげると、挑発的に微笑んだ。




──




あのあと俺たちは、毎週末を映画に買い物に遊園地──彼の言う"埋め合わせ”に費やした。俺にとって初めてのことばかりで、クラスメイトの彼に教えて貰えることが嬉しかった。


こんなに遊んでいていて良いのかと思ったが、俺たちも平日は任務をこなしているし、休日は先輩方が頑張ってくれているらしい。


そして、今まで自分のことを話そうとしなかった彼について、一緒に行動するうちに気付いたことがある。


ひとつ、おそらく彼は、猫を被っている。
遊園地に行った時だって、


｢なあ！次はあれ乗ろうぜ！声出した方が担任にイタ電な！｣


と声高らかに言ったあと、気まずそうに目を逸らして


｢…僕、ちょっとトイレ行ってくるから、先並んどいて。よろしく〜｣


って逃げたり、
初めてのクレーンゲームで全然上手く出来ない俺を見て、


｢あははは！Aヘタクソじゃん！やっば、ウケる！流石五条家は違うな〜！｣


なんて爆笑したあと、ふと何かを思い出したような顔つきになって、ひとつ咳払いをしてから、


｢…このナイスガイの僕に任せなさい｣


なんて華麗に商品を掴み損なったり、とにかく、彼の素が覗く瞬間が多々あった。
それが仲良くなれてる証拠だと思って、俺は嬉しかったし、ずっと素でいて欲しいとも思う。

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