何度でも (ページ7)

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「シリウス・ブラックが脱獄したんですって」

朝食の席で飛び出たその名前に、Aは酷く動揺した。

───シリウス・ブラック。旧友の一人だ。

Aの記憶のブラックは、自由奔放で、ジェームズと悪戯ばかりしていて、よくAにもちょっかいをかけてくるような、まさに少年と青年の間、といった感じであった。

美形の多いブラック家の長男である彼は、とても綺麗な顔立ちをしていて、よく女子生徒に囲まれていた。

廊下の向こうにAを見つけては、その女子たちを適当にあしらって、「ミシェル、ジェームズ見かけなかったか？」なんて適当な話題で話しかけてくるものだから、Aはよく女子に睨まれていた。
相棒の居場所なんて、誰よりもわかっているだろうに。

それが鬱陶しくて、面倒くさくて、Aはシリウス・ブラックが苦手だった。そんな彼が苦手で、それで。

…そんなことは、別にどうでもいいのだけれど。

あらまあ大変、といった様子で日刊予言者新聞を読む母に、「その、シリウス・ブラックは、なにを、したの」と尋ねる。その声は冷静そうに聞こえて、震えを隠すのに必死だった。

久々に口にする友人の名前。彼の名前はこんな発音だったっけ。

「大量殺人よ。マグル12人と、魔法使い1人を殺したの」

母親はどうぞと新聞紙を手渡す。Aは食いつくように紙面を見た。

髪も髭も伸びて、頬が痩せこけたブラックが、マグショットボードを掲げている。かつての美しさ、無邪気さはそこになく、その姿は、ただ囚人でしかなかった。

「…まさか」

まさか、そんなわけ。