何度でも (ページ20)

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ふと我に返ったのは、狼と化したルーピンが、ペティグリューと繋いだ手錠を自ら捻じり切った時だった。ペティグリューのもう片側には、ロンがいる───。

「ロン！離れて！」

Aが叫ぶと同時に、巨大な犬が狼と化したルーピンの首に噛みつき、ルーピンを遠ざけた。
大きな黒い犬。Aが中庭で見たのと同じ犬だった。

犬、もといブラックは、その鋭い鉤爪でルーピンと引き裂きあっている。それを、Aはただ口を開けて眺めていた。友人2人が傷つけあい、傷つくのを、ただ眺めることしかできなかった。

バン！

大きい音がした。ロンが地面に倒れている。
ペティグリューがルーピンの杖を持っていた。

バン！もう一度大きな音が鳴る。
ハリーと我に返ったAが武装解除の呪文を唱えるも遅く、ペティグリューはみるみる縮み、ネズミと化す。ロンと繋がれていた手錠をするりと抜け、草むらをカサカサと走り去った。

Aはその音を頼りに呪文を飛ばす。しかし、当たった手ごたえもなくただ草を焦がしていくだけだ。

「シリウス、あいつが逃げた」

ハリーがブラックにそう言ったとき、彼はルーピンとの闘いですでにボロボロだった。鼻面と背が血まみれだ。しかし、彼はハリーの言葉に素早く立ち上がりペティグリューを追った。

傷だらけの彼1人に任せるわけにはいかず、Aもそれに続く。
途中でブラックがまた犬に変身すると、その疾走に負けじと食らいついて走った。ペティグリューを捉えるには、彼の嗅覚を頼るほかない。

「、？！」

ブラックが立ち止まったのは、湖畔であった。そこには、なんと吸魂鬼の大群が待ち構えていた。

「なんでここに、！」

寒気がする。体が重くて、動けない。
それでも、この人を守るには、自分が動くしかなかった。杖を握りしめ、ブラックを吸魂鬼から庇うようにして立つ。

「エクスペクト・パトローナム！」