何度でも (ページ9)

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夏の長期休暇が明け、再びホグワーツでの生活が始まった。

ホグワーツ特急でも、ホグワーツの大広間でも、談話室でも、シリウス・ブラックの名前が飛び交っていて、「ブラックは極悪人だ」だとか、「ブラックは最悪の殺人鬼だ」なんて話になる度に、Aはそんなわけないのに、と唇を噛んだ。

そして、ニュースはもう一つあった。

リーマス・ルーピンが闇の魔術に対する防衛術の教授の職に就いたのだ。彼も、旧友の一人である。

彼は監督生も務めた優等生で、ジェームズとシリウスの悪戯を1歩後ろで見ているようなタイプかと思えば、時折それに参加するような、そんな人だ。

彼の初授業は大好評だった。まね妖怪ボガードを使った実技授業で、昨年度のロックハートの朗読劇授業とは大違いだ。

「次は、A！」

ルーピンに名前を呼ばれ、前に進み出る。

彼が好印象なのは、生徒を名前で呼ぶ親しみやすい先生だから、というのもあるのかもしれない。
前世では、いつもミシェルと名字で呼ばれていたから、Aは少しだけ恥ずかしかった。

ロンが変えたローラースケートを履いた巨大な蜘蛛は、黒い塊に変わっていく。
それが横たわった人だと気がついたとき、Aは慌てて杖を振って「リディクラス！」と叫んだ。

…ブラックだった。顔は髪に隠れてよく見えなかったが、それがブラックであると、Aにはすぐに気がついた。

収監される前の若々しく綺麗な姿だったため、きっと生徒はそれが脱獄犯シリウス・ブラックだとは気がついていないだろう。友人のルーピンにはバレているかもしれないけれど。

しかも、横たわっているだけではなかった。きっと、彼は死んでいる。

…ああ、怖いんだ。友人を失うのが。

───彼を、失うのが。