episode.91 ページ41
*
阿部side
最近鍛えてるらしいラウールに背負われて、俺はあっという間に車に運び込まれた。
別れ際、朦朧とする意識の中でめめに押し付けてきたライブ演出に関する企画書は、ちゃんとみんなの目に留まってくれるだろうか。
背もたれが倒された助手席に身体を預けると、不安そうなめめとラウを残して車が走り出した。
普段、気なんて遣わなくても話が弾む相手なのに、体調不良に気まずさも手伝って、なかなか言葉が出てこない。
流れる微妙な空気を少しでも感じないよう窓の外を眺めた時、隣でプロデューサーさんがぽつぽつと話しはじめた。
P「喋るのしんどいだろうけど無言も気まずいでしょ？俺の独り言だと思って聞き流してくれて良いからさ、」
「、、はい、」
P「うちの娘がね、今ラウールくんと同い年なんだけどさ、阿部くんと同じ病気なんだ。」
「っ、、へ？、！」
P「娘は５歳で発症して、一人っ子っていうのもあったけど、それはそれは過保護になった。
でもそんな娘がさ、進路を考える歳になって、関西の大学に進んで一人暮らしをしたいって言い出したんだよ。
もう嫁も俺も心配だから良いよって言ってあげられなくて。
何かあったらどうするんだ、ってね。
でもある時娘がさ、『パパまさか仕事先の人にも同じようなこと言ってるんじゃ無いよね？』って。
あ、もちろん阿部くんだって一切分からないようにだけど、話をしたことがあってね、もう俺は図星すぎて冷汗よ。
『パパたちが思ってるよりも周りは優しいよ。小学校低学年の時ですらクラスの子が助けてくれたの、パパ覚えてない？』って。
もちろん大切な娘を助けてくれたんだから忘れるわけもなかったんだけどさ、俺最近まで知らなくて。
その助けてくれたのがさ、村上真都くんって子だったんだけど。」
「、え、、ラウ、、あ、聞いたことある、、小学校の時、、」
P「そう、彼は小学生の時からちゃんと周りが見えてて困ってる人をすぐに助けてあげられる子なんだって。
俺が思ってるよりずっと、娘も阿部くんも、理解のある人がそばにいて強く生きてるんだなって思ったんだよ。」
ボーッとしてる頭だからある意味冷静に聞いていられたけど、娘さんの話を聞いて胸がギュッとなった。
幼い頃から、病気そのものだけじゃなく色んなものと闘ってきたんだろう。
理解のある人、か。
働かない頭でぼんやりと考えていると、あっという間に車は見慣れた病院に到着していた。
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ストロベリー - 3早く読みたいです 頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (
レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか？ (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです！更新待ってます、頑張ってください！ (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年5月23日 22時
