君が何もかも見えなくなるその前に【太宰治】

31：それは言葉よりも大切なこと ページ31

半年が経って、あと1ヶ月…。
この半年は色んなことをした。旅行に行ったり色んな美味しいものを食べた。太宰くんに沢山ワガママを言って…


「ﾋｭｯ…はぁ…はあ…与謝野さんいつもありがとう…。」

「いや…気にするな。」

「与謝野さんゴメンなさい…私の仕事…全部押し付けちゃって…。本来は私のすることなのに…。ちゃんと分かってくれるかなあ…。」

「その辺は大丈夫。」

「そっか、良かった。」



太宰くんが来ない時間に2回来てくれる。2回目は2人で話すことを決めてるんだ。



「まだしたいことあったのになあ…。動けてもあと数回…それからはずーっとベッドの上か…。」

「どうするんだい？」

「最後は決めてる…太宰くんも同じだと嬉しいけど…。」




コレしかない。それこそベタかよって思われるし、言われるかもしれないけど…。私はそれでも良い。最後くらいベタベタで良いじゃん。



「そろそろ太宰が来る時間かな？」

「そうですね。ありがとう与謝野さん。社長にもよろしく伝えておいてください。」

「あぁ、もちろん…いつも伝えてるよ。」




与謝野さんが帰った数時間後に太宰くんが来てくれた。




「A！！」

「何？」

「多分考えてることは一緒だと思う。ベタベタかもしれないけど…結婚しよう？式なんて挙げなくても…写真は撮ろう？」

「太宰くん…私も同じ気持ちだよ…やっぱり一緒だった。」

「はい、指輪だよ。」

「あと1ヶ月の私にはもったいないよ…こんなに良い指輪。」

「だからこそだよ。」

「太宰くんはやっぱりバカだね。」





もう1つ紙を広げて書けと急かされて、婚姻届を書いた。太宰くんは帰りに出してくると言ったが、帰る頃には役所はやってないと思うけどなあ…。



「ちゃんと予約はしてあるから…明日行こうよ。外出許可は私の方から言ってあるよ。」

「何から何までありがとう…。」

「いーえ、もう…残すものは無い？」

「ないかな？」

「分かった。」




大丈夫だよ太宰くん。とっておきのプレゼント残してあるよ。きっと貴方なら喜んでくれるはず。

32：そばにいると誓った証→←30：かけがえのない日々

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す