君が何もかも見えなくなるその前に【太宰治】

29：貴方に出逢ったその日から ページ29

「メリーゴーランドかあ…乗るならジェットコースターが良かったな。」

「君、今自分の状況分かってる？ジェットコースターなんか乗って、病気が悪化したらどうするのさ。」

「はぁ…そっか。」

「大人しくメリーゴーランドね。」

「はあーい。」



何に乗ろうか、馬？馬車？ユニコーンやベガサス？ウサギなんかも良いかもね。


「私がフランス人形で太宰くんが兵隊なら…馬車を引く馬に太宰くんが乗って、私が馬車なら…絵になる？」

「…。」



あ、また不機嫌になった。と考えてると腕を引っ張られて




「フランス人形が相手なら…王子様と一緒に白い馬が物語だろう？私が兵隊？認めないね。相手が君なら…尚更王子様じゃなきゃ。君のようなフランス人形には私の様な王子様じゃなきゃいけないだろう？」

「太宰…くん…。」




白い馬に私を先に乗せてから、後ろに太宰くんが跨った。




「美しいフランス人形には、カッコイイ王子様がお決まりなんだよ。」

「バカだなあ…フランス人形の王子様は貴方だけよ！！」

「でしょうね。」




案外あっさりだね！！




「なんか不満そうだね。」

「案外あっさりなのがなんか…。」

「あぁ、そう。」




なんだ…




「王子様の自覚あったんだね。」

「無いわけないよ。月が輝く夜に14歳の頃に私が見つけたんだよ？1人でいたお姫さまを見つけたんだからね！！」





だからとても思う…感情が薄くて、乏しくて…表情は出てこなくて…いつもヘラヘラとして…笑う時はへらりと笑う…。そんな自分で良かったと思った。だって、あんだけ嫌がられて…気持ち悪がられて…気味悪がれていた私を見つけてくれた…。
そして好きだって…綺麗だよ可愛いって言ってくれた…貴方に会えた…。



太宰くんが見つけてくれた…出会えたんだ…。




「私も思うよ…太宰くんが私の王子様で良かったって…。」

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