ヒロインの色恋沙汰とかどうでもよき｡【梟谷】

休息なんてありゃしない ページ30

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「うぁぁぁぁぁ……」


ほどよく冷房が効いた部屋｡
蝉の鳴き声｡
グラスに入ったカラリと涼しげな音を立てる氷｡



──そして数学の課題｡


目の前にある大量の課題に何とも情けない声が漏れ出てしまうのも仕方がないと思う｡


課題が嫌いなんじゃない｡数学が嫌いなんだ｡


もう一度言う､数学が嫌いなんだ｡


「こんなの無理でしょ」


某青い猫型ロボットに助けを求めたいくらいには追い詰められている私だが生憎塾はまだ閉まっている時間｡


嗚呼､もういいや｡


教科書は閉じてペンは机に放り投げてグラスに入ったカルピスを一口飲むとその甘さに思わず笑みが溢れる｡


他の課題をやるのも面倒だから何となく近くにあった雑誌を手に取る｡


パラパラとめくっているとスマホからチャットアプリの通知音が鳴った｡


画面に表示された名前は美紀｡

そしてメッセージは何とも楽しそうなお誘い｡


『今度の花火大会一緒に行かない？』


そういえば去年の花火大会も美紀と真理､あと何人かの女子と一緒に行ったな｡みんなで浴衣着て､屋台巡って､花火って写真やテレビより実物の方がめっちゃきれいだよね！みたいな話したっけ｡


まあ､せっかくの夏休み｡課題漬け､部活漬けじゃあ楽しくないからな｡


『行く！』

短く返事して時間と待ち合わせ場所指定して､そして今回は他の女子を誘わないように頼んだ｡



……親友として美紀にちょっとばかりサプライズを仕掛けてあげよう｡


そんな私の善意､もとい悪戯心はムクムクと成長していく｡



計画はこう､



この花火大会､赤葦も誘って美紀の反応を楽しもう｡

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