たからもの1 ページ27
2023/3/14
番外編2『200万人突破ライブ』とvol.11『桜舞う』の間の話
「さあA目を閉じて」
リビングでゆったりとした時間を過ごしていたら、彼が面と向かってそう言ってくる。急にどうしてだろうと首を傾げていると彼はふわりと笑う。
「楽しみなことが待ってるから、ほら早く」
ドキドキしながら目を閉じると、シャラリと音が聞こえてきて、下ろしている髪の毛の下に彼の手が回ってくる、デコルテにひやりとしたものが当たった。驚いて目を開ければ視界いっぱいに彼の顔、何度見ても格好良くてドキッとする。
「あっAまだ目開けちゃ」
『ごめんっ、えっと、もしかして拳くんネックレス着けてくれてる？』
「せいか〜い、お楽しみはホワイトデー俺からのプレゼントでした」
『えっ』
先日チャンネル登録者数２００万人を目指すライブを２日間かけて終えたばかり。その疲れもあるだろうし、彼も私も仕事が忙しかったからホワイトデーは特にデートなど計画していなかった。それなのにお返しのプレゼントを用意してくれていたことに驚いた。
『拳くん、ありがとう嬉しい』
「んふふ、Aの可愛い笑顔が見られて俺も嬉しい。あっでもまだ見ちゃ駄目だよ」
『たぶん今下向いてもあまり見えないと思う、チェーンの長さ的に』
「それもそうか、もうちょい待ってね」
彼は私の正面から首の後ろの留め具を付けようとしてくれているけど、素直に後ろに回った方が良いのではないのかなぁと思ってしまう。
「こっちの方がAの可愛い顔見ながら出来るでしょ〜なんならキスも出来る」
軽くチュッと音を立て、頬と唇へ順番にキスをしてくる。ネックレスを着けてくれようとしてるのに、どうしてキスをしてくるのか、キス自体は嬉しいけどキスのシチュエーションではないから少し恥ずかしい。
『拳くん、ネックレス付けるのに、キスしなくても良いでしょ』
「いやいや可愛い唇も頬も俺にキスして欲しいって言ってた」
『い、言ってないよっ』
「んっへへ〜、俺には聞こえたの」
『もう拳くんったら……あと私の考えてることに対して答えなくて良いから』
「えーだってAの考えてること分かっちゃう、ほらキスしてって聞こえたし、考えてることも聞こえてくるんだよね。相思相愛の俺たちは以心伝心、喋らなくても会話できちゃうってすごいよね」
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作者名：佐伯 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年11月5日 10時
