笑顔の仮面は知っている10【探偵チームKZ事件ノート】

第33話『兄』 ページ39

彩side


「治療総数は6600症例に達する。つまり、周防夫妻は超・有名なエリート医者なんだ。わかったか？」

きつく言われ、私は何度も頷く。

上杉くんは、深いため息をついて天井を仰ぐ。

「周防夫妻とは、俺の両親も知り合いだよ。俺も何度かあったことがある。頭が良くて、俺も尊敬してる。美門のストーカーをして、神崎に嫌がらせしてるのが周防夫妻の娘なのか。信じられん・・・」

尊敬している人の娘がそんな人だったら、ショックだよね。

もしこの場に杏奈ちゃんがいたら、きっと巧みな話術で上杉くんを励ましていただろう。

そして、場の雰囲気を和ませてくれるに違いない。

「周防光のやばい情報を握ろうと思って、いろいろ嗅ぎ回ったら、結構いろんなネタがあがってきた」

自信ありげな黒木くんの表情に、私はワクワクする。

「周防夫妻は優しく穏やかな性格をしている。周防家はもちろんお金持ちで、裕福な家庭だ。そのため、周防光は幼い頃から甘やかされて育ってきたんだ。何不自由なく育ってきたように見えるけど、そんな周防光が、13年間ずっと抱えている悩みがあるんだ」

え、なんだろ。

「簡単に言うと、親からの愛情だ」

みんなが、何となく察する。

「両親とも優秀な医者である周防光は、昔から、家で兄と2人だけになることが多かった。周防夫妻は休みの日もずっと働いているし、頻繁に遊んでもらえるわけじゃない。親からの愛情が足りないことが、周防光にとってはとても大きなストレスだったんだ。今の自分勝手で傲慢な性格も、そのストレスが原因だと思う」

両親になかなか遊んでもらえなかったのは可哀想だけど、それで杏奈ちゃんを傷つけていい理由にはならないよ。

「そして、10年以上ずっとそのストレスを抱えていた周防光は、小6の時にストレスを発散させ始めた。両親に対して過度な反抗をし始め、周防夫妻はかなり手を焼いているらしい。それだけじゃなく、万引きをしたり、神崎にしたみたいに学校裏サイトで悪口を言ったり、隠れていじめなんかもしている。」

酷いっ！

「だけど、表面上は明るく優しい女の子を演じてるから、みんなから人気もあるし、顔も広い。頭もいいし、信頼度も高い。」

上手に生きてる子だなぁ。

よっぽど器用じゃないと、そんなことできないよ。

私、絶対できないもん。

「で、調べていくと、そんな周防光の弱点が一つだけ見つかった」

おお！

黒木君は指を組み、そこに顎を載せる。

「それは、兄だ」

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