第22話『待機』 ページ28
杏奈side
若武くんは少し足を早め、みんなの前に出ると振り返った。
「よし!KZの目的は、1、神崎への謝罪。2、周防光本人から罪を公表させる。3、今後美門へのストーカーをやめさせるための脅すネタをゲットする。この3つでいいな?」
皆がそれぞれ頷いた。
それを確認して、若武くんは満足そうな顔をする。
「そうと決まれば善は急げだ。役割分担をする。黒木と美門は、周防光について、どんな些細なことでもいいから調べてくれ。家族構成から友人関係まで、全部だ。小塚は、美門がプレゼントされた物から周防光の指紋を検出しといてくれ。何かの役に立つかもしれない。上杉は、周防光のIPアドレスの特定。アーヤは、この事をノートにまとめておくこと。それから、学校で神崎に被害があるようなら、すぐに報告してくれ」
私は「ん?」と思って口を開く。
「どうしてそれを彩ちゃんに頼むの?」
若武くんは、片手で前髪をかきあげ、厄介そうに私を見た。
「おまえ、どうせ嫌がらせされても、心配かけたくないとか思って俺らに言わないだろ」
うっ・・・そんなことないって言えない。
「じゃあ、私の役割は?」
そう聞くと、若武くんはぐいっと私に顔を近づけた。
「待機だ」
私だけ待機?私の問題なのに?
「やだよ。私もなにか役割欲しい」
「今回の件で狙われてるのは神崎だ。周防光は普通の奴じゃない。何かされてからじゃ遅いんだよ」
「でもっ、」
私が反論しようとすると、若武くんは目の中の光をきつくした。
「た、い、き、だ」
若武くんにこんなふうに指示されるのは初めてだった。
「・・・はーい・・・」
気圧されてしまい、仕方なく従うしかなかった。
私は泣き真似をして彩ちゃんに抱きつく。
「若武くんが冷たい・・・」
彩ちゃんは苦笑して、私の頭を撫でてくれる。
「よしよし。でも、私も若武も、みんな杏奈ちゃんのことが心配なんだ。だから、杏奈ちゃんは絶対に無理しないでね」
心配、か・・・。
心配かけて申し訳ないって思うのは、みんなに対して失礼なのかな。
「各自、自分の役割をしっかり果たすように。KZメンバーの神崎に手を出したことを後悔させてやる!」
私のためにそんなに熱くなってくれるなんて・・・。
私は、自然と頬が緩む。
ちょっと、嬉しいかも。
「土曜日、授業が始まる前にカフェテリアに集合だ。遅れるなよ」
気合いの入った若武くんの声は、夜の街に響いていた。
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時