笑顔の仮面は知っている10【探偵チームKZ事件ノート】

第12話『疑わしきは罰せず？』 ページ17

杏奈side


次の日登校するなり、佐田真理子ちゃんが私の方にツカツカと歩み寄ってきた。

「杏奈、ちょっと来い！」

すごい剣幕の真理子ちゃんに腕を引かれ、女子トイレまで連れていかれる。

女子トイレには誰もおらず、私と真理子ちゃんの2人きりになった。

「おまえ、」

真理子ちゃんは、驚いている私の顔を覗き込む。

「ツバサと付き合ってるって、ほんとかっ！？」

さすが情報通の真理子ちゃん・・・噂が回ってくるのが早い。

もう学校まで回ってきてるのか。

私は、至って冷静に答える。

「付き合ってないよ」

真理子ちゃんは疑わしい目を私に向ける。

「兵藤が、本人たちから付き合ってるって聞いたって言ってるけど。それは嘘ってことか？」

私は軽く首を横に振る。

「それは本当」

真理子ちゃんは目を丸くし、訳が分からないというように首を傾げる。

事情を説明するには、ちょっとややこしいんだよねぇ。

「とりあえず、疑わしきは罰せずだよ。その話、絶対に広めないでね」

真理子ちゃんはポケットからスマートフォンを取りだし、操作して私に画面を見せた。

「それが、もう罰されちゃってるんだよな」

真理子ちゃんが見せてくれたのは、学校裏サイトだった。

スクロールしてみてみると、私と翼が付き合っているという証言があったことや、学校でもよく話しているし、一緒に帰ったりもしているなど、私と翼の関係がツラツラと書かれていた。

そしてさらには、こんなことも書かれていた。


「美門翼とちょっと話してるだけで、神崎杏奈は睨んでくる。影で悪口も言われる。みんな、気をつけて」


なにこれ。

大嘘もいいところだ。

「こんなの、まるっきり嘘だよ」

真理子ちゃんが私の頭を小突く。

「んなの、クラスが同じなんだから、言われなくても見てれば分かるよ。だけど、これが嘘だと分からない輩が大半だ。ツバサは他校からも人気だし、有名人だからな。いろんなヤツらが狙ってる」

翼は貴族か何かなの？

「気をつけろよ杏奈。この世界は、疑わしきは罰そうとする奴らばかりだ。疑わしきは罰せずなんて綺麗事、通用しないんだよ」

珍しく真理子ちゃんが、ごもっともなことを言ってる。

「心配してくれてありがとう。私、こういうのは気にしないタイプだから大丈夫だよ」

真理子ちゃんは不敵な笑みを浮かべる。

「ぶっちゃけ、私もツバサのことは狙ってるから、たまに杏奈が憎いけどな。友達だから、許してやる」

それはどうも。

第13話『心配しないで』→←第11話『騎士様』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す