笑顔の仮面は知っている3【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ49)

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第66話『作戦』ページ49

杏奈side

「美門、8人の位置は？」

若武くんに言われ、美門くんは再び片膝をついて匂いを嗅ぎ始め、廊下の絨毯の上に指で内部図を書いた。

「ドアを入ったところの突き当たりが窓、隣がバーカウンター、その手前にソファ。このソファに4人が並んでテレビを見ている。窓のそばに1人、バーカウンターに1人。左手に階段が6段あり、それを上った寝室にベッドが4台。2人が寝転んで音楽を聞いている」

小塚くんがみんなに防護マスクを配る。

「噴射器の中には、小麦粉も入ってる。催眠剤だけど、どこに向かって噴射してるのか見分けにくいからね。アーヤ、できるだけ吸い込まないように気をつけて」

正直、結構怖い。

でも、行かなきゃ。

「どう攻める？」

黒木くんに言われて、若武くんが作戦を組み立てる。

「まず、黒木がドアを開ける。向こうが音に気づいた時には、もう全開状態になってて欲しいから、手で開けたんじゃ遅すぎる。蹴り飛ばせ。一瞬で決めろよ。そしたら俺が最初に突っ込むから、後に続け。上杉もだ。向こうが慌てているうちに寝室まで駆け込んで、2人を片付ける。もたついたら、あっちが有利だ。速攻でやるしかない。アーヤは噴射器が動かないように前に背負え。ノズルは美門に任せるんだ。俺たちの後から、2人で一緒に入って、とにかく撒き散らせ。小塚と神崎は補助。全体を見渡していて、手が足りないところに入る。神崎は耳が利くから、アーヤが噴射して辺りが見えなくなったら、誰がどう動いているかを教えてくれ。」

私は自分の耳に手を当てる。

しっかり役目を果たすんだ。

「上杉、鍵開けろよ」

若武くんに言われて、上杉くんがドアの前ひざまずき、ズボンの後ろポケットから出したカッターの先を使って、センサーの内部を操作し、それを開けた。

どんなかすかな音も、まったくしなかったので、若武くんが思わず言ったくらいだった。

「おまえ、すごいな。赤い仮面団に就職できるぜ」

黒木くんが腕を伸ばして私たちを下がらせる。

若武くんが握った拳を突き出した。

「では勇敢なるKZの諸君、幸運を祈る！」

私たちは、コツンと拳を突き合わせ、頷きあった。

「全員、位置についたか。よし、黒木、行けっ！」

黒木くんがドアから少し離れたところに立つ。

大きく息を吸ってからドアに向かって駆け出すと、その勢いを右脚にため、足を飛ばしてドアを蹴り倒した。

破壊音が響く中を、若武くんたちが飛び込んでいく。

私達もその後から部屋の中に入る。