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第45話『食事会』 ページ28

杏奈side


日曜日。

私は翔との待ち合わせ場所に向かう。

いつもより少しだけオシャレをして、翔からもらったネックレスをつけていた。

なんたって社長とのお食事会だもん。

変な格好では行けない。

駅前に着くと、もう翔が待っていた。

私はあわてて翔に駆け寄る。

「ごめんね、待たせちゃって」

私がそう言うと、翔は腕時計に目を向ける。

「約束15分前。全然早いぜ。楽しみすぎて、俺が早く来すぎただけ」

綺麗な瞳がふっと優しい笑みを浮かべた。

私はクスッと笑う。

「嬉しい」

私と翔は、近くにあったファミレスに入り、向かい合って座る。

それぞれ自分の食べる分を注文してから、私たちはゆっくり話を始めた。

「翔とごはん一緒するなんて初めてだね」

「だって俺たちが出会った時って、小4だろ?懐かしいな」

私は目を伏せる。

「中学生になって、翔に何があったかは彩ちゃんたちから聞いたよ。ごめんね、勝手に」

翔は瞳の奥に少しだけ、寂しそうな光を忍ばせる。

「いいよ。いつか会えたら話そうと思ってたし」

私は翔の瞳を真っ直ぐ見つめる。

「よく頑張ったね」

私がそう言うと、翔は一瞬目を見開いてから、幸せそうに微笑んだ。

「お前のそういうとこ、ほんと変わらないな」

翔は椅子の背にもたれ、天井を仰ぐ。

「俺、神崎のそういうとこ、すげー好きだよ」

それは、どういう意味なんだろうか。

返答に困ったので、私は無理やり話題を変えることにした。

「それにしても、翔がKZのみんなと知り合いだったなんてびっくり。すごい偶然だね」

「ん、俺も驚いた」

翔がそういった時、私たちの席に注文した食事が運ばれてきた。

「翔はさ、彩ちゃんのことどう思ってるの?」

翔は一瞬固まる。

「なんだよ、いきなり」

もうこの際、はっきり聞いてしまおう。

「好きでしょ?彩ちゃんのこと」

翔はほんのり頬を赤らめて、照れたように横を向いた。

「こういうことに関しては、鋭いよな」

「女の勘ってやつですよ。翔の目、とっても優しかったから、意外と分かりやすかったし」

私は机に両肘をついて手を組み、その上に顎を置く。

「分かるよ。彩ちゃん、いい子だもんね」

可愛くて優しくて、ちょっとトロイ感じも翔が好きなタイプなんだろうな。

「そっちこそ、美門とかいう奴と結構仲良さそうだったじゃん」

美門くんの名前を口にされ、私は少し驚く。

周りから見たら、そんなふうに見えてるんだ。

第46話『やめとけよ』→←第44話『約束』



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(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年7月26日 0時

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