第16話『トップ下』 ページ17
彩side
黒木くんは、またもため息をついた。
「今まで若武は、ピッチでトップ下にいたんだ」
はっ!?
いきなり話が見えなくなってしまって、私は絶句。
黙っていると、黒木くんが笑った。
「ピッチっていうのは、サッカー場の白線内のエリアのこと。つまり試合をする場所のことだよ。トップ下というのは、ポジションの一つ。ピッチの中央に位置していて、試合でも一番脚光を浴びるポジションなんだ」
ああ若武が、すごく好きそう。
「トップ下は、攻撃的ミッドフィルダーとも呼ばれていて、そこに立つ選手は、最も重要な攻撃要員となる。優れた身体能力や精神力を要求されるんだ。たいせい背番号10をつけてるね。中田やジダンもそうだったし、今年イタリアに行った本田もそうだよ」
トップ下は、スターなんだね。
「若武は、KZに入った時からずっとトップ下で、そこは若武の定位置って言われていた。けれど昨日の入れ替えで、初めてそこから外されたんだ。その後ろに位置するサイドハーフに変更になった」
その時の若武の顔を、私は想像した。
きっとものすごく傷ついて、それを一気に怒りに変えて爆発させたに違いない。
だって花形ポジションに、若武がこだわっていないはずがないもの。
それはきっと、若武のプライドだったんだ。
「えらい剣幕で怒って、監督に抗議して、俺のポジションはトップ下だけです、そこ以外はやらないって」
うん、気持ちはわかる。
「それで、さっき話した通りの展開になったわけ。最後に若武先生は、監督に向かって捨て台詞まで吐いた。俺を除名処分にしたこと、今にきっと後悔しますよって」
あーあ、あくまで強気だあ・・・。
生まれた途端に、「天上天我唯我独尊」って言ったお釈迦様みたい。
「それで監督も大激怒で、怒鳴り声をあげたんだ。KZ創設以来、監督とメンバーが大喧嘩をするのは初めてだって」
悪いのは若武かも、と私は思った。
だってみんなが、自分の好きなポジションを主張していたら、チームになんて成り立たない。
自分に与えられたポジションで、頑張るべきじゃない?
「うちの探偵チームのメンバーは、なんて言ってるの?」
私が聞くと、答えは、すぐに返ってきた。
「小塚は唖然としてて、上杉は怒ってる、バカ武って」
ああ、そうだろうなあ。
「美門くんは?」
黒木君はだまりこみ答えなかった。
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アーヤ(プロフ) - 住滝良さんのと、少し文が違って「ここ、本文あれだったよなw」って楽しいです! (5月11日 21時) (レス) @page47 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
アーヤ(プロフ) - すごく面白いです!このまま、ストーリ続けてください。(あれ、完結してたっけ?)少しだけわがまま言うと、kzの皆は彩の親友(恋人?)ダァーッ! (5月11日 21時) (レス) @page37 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
桜@ひなた - 面白すぎです!私はアーヤと若武推しです! (2023年2月12日 10時) (レス) id: fb711c9d23 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - まこさん» ありがとうございます!!黒木くんかっこいいですよね! (2020年10月30日 23時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
まこ - すごく面白いです! 私も黒木くん推しです! 更新待ってます! (2020年10月30日 17時) (レス) id: e335c0e9f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年3月13日 20時