検索窓
今日:48 hit、昨日:30 hit、合計:358,133 hit

第16話『トップ下』 ページ17

彩side


黒木くんは、またもため息をついた。

「今まで若武は、ピッチでトップ下にいたんだ」

はっ!?

いきなり話が見えなくなってしまって、私は絶句。

黙っていると、黒木くんが笑った。

「ピッチっていうのは、サッカー場の白線内のエリアのこと。つまり試合をする場所のことだよ。トップ下というのは、ポジションの一つ。ピッチの中央に位置していて、試合でも一番脚光を浴びるポジションなんだ」

ああ若武が、すごく好きそう。

「トップ下は、攻撃的ミッドフィルダーとも呼ばれていて、そこに立つ選手は、最も重要な攻撃要員となる。優れた身体能力や精神力を要求されるんだ。たいせい背番号10をつけてるね。中田やジダンもそうだったし、今年イタリアに行った本田もそうだよ」

トップ下は、スターなんだね。

「若武は、KZに入った時からずっとトップ下で、そこは若武の定位置って言われていた。けれど昨日の入れ替えで、初めてそこから外されたんだ。その後ろに位置するサイドハーフに変更になった」

その時の若武の顔を、私は想像した。

きっとものすごく傷ついて、それを一気に怒りに変えて爆発させたに違いない。

だって花形ポジションに、若武がこだわっていないはずがないもの。

それはきっと、若武のプライドだったんだ。

「えらい剣幕で怒って、監督に抗議して、俺のポジションはトップ下だけです、そこ以外はやらないって」

うん、気持ちはわかる。

「それで、さっき話した通りの展開になったわけ。最後に若武先生は、監督に向かって捨て台詞まで吐いた。俺を除名処分にしたこと、今にきっと後悔しますよって」

あーあ、あくまで強気だあ・・・。

生まれた途端に、「天上天我唯我独尊」って言ったお釈迦様みたい。

「それで監督も大激怒で、怒鳴り声をあげたんだ。KZ創設以来、監督とメンバーが大喧嘩をするのは初めてだって」

悪いのは若武かも、と私は思った。

だってみんなが、自分の好きなポジションを主張していたら、チームになんて成り立たない。

自分に与えられたポジションで、頑張るべきじゃない?

「うちの探偵チームのメンバーは、なんて言ってるの?」

私が聞くと、答えは、すぐに返ってきた。

「小塚は唖然としてて、上杉は怒ってる、バカ武って」

ああ、そうだろうなあ。

「美門くんは?」

黒木君はだまりこみ答えなかった。

第17話『ドラマチック』→←第15話『入れ替え』



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (127 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
247人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アーヤ(プロフ) - 住滝良さんのと、少し文が違って「ここ、本文あれだったよなw」って楽しいです! (5月11日 21時) (レス) @page47 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
アーヤ(プロフ) - すごく面白いです!このまま、ストーリ続けてください。(あれ、完結してたっけ?)少しだけわがまま言うと、kzの皆は彩の親友(恋人?)ダァーッ! (5月11日 21時) (レス) @page37 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
桜@ひなた - 面白すぎです!私はアーヤと若武推しです! (2023年2月12日 10時) (レス) id: fb711c9d23 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まこさん» ありがとうございます!!黒木くんかっこいいですよね! (2020年10月30日 23時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
まこ - すごく面白いです! 私も黒木くん推しです! 更新待ってます! (2020年10月30日 17時) (レス) id: e335c0e9f3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年3月13日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。