第33話『何かいる!』 ページ34
彩side
「じゃ、来週の土曜日、ここに集合だ」
若武がそう言い、私たちが解散しようとした時だった。
私の視界の端を、また影かかすめた。
あの庭の、木の下だった。
やっぱ、何かいるんだ!
私は、ゾッとした。
だってここ、屋上だよ。
すると、私の隣にいた杏奈ちゃんが私の肩をつつくと、小声で話しかけてくる。
「なにか足音みたいなのするよ。動物みたいな。あそこの木の下、何かいるのかな?」
杏奈ちゃんってほんとに耳がいいんだ。
だって、足音なんて聞こえないもん。
「立花、神崎、どうしたの」
翼に聞かれて、私は木の下を指さした。
「あの辺に、何かいるみたいなの」
上杉くんが笑った。
「ここ屋上だぜ」
ん、それは分かってるんだけど。
若武が、大声を出す。
「もしかして俺たちの優勝を阻もうとするスパイかっ!?」
それは、違うと思う。
「見てくるよ」
翼が窓に近づき、ガラス戸を開けた。
「あれ、これ、なんの匂いだっけ」
そう言いながら庭に入って木の間に隠れてしまい、ガサガサと枝を揺らしていたけれど、やがて思い当たったというような笑い声を響かせた。
「なんだ、おまえか」
え?
顔を見合せる私たちの前に、木の影から現れた翼は、なんと小さな猫を抱いていた。
「こいつだったよ」
そのまま庭から部屋の中に入ってきたので、私たちは翼の周りに集まった。
近くで見ると、それは真っ黒な子猫だった。
あれ、これって、駅の下の店の前に捨てられてた猫だ。
「可愛い・・・!」
杏奈ちゃんは子猫を見て目をキラキラと輝かせる。
「神崎、動物好きなのか?」
若武に聞かれ、杏奈ちゃんは嬉しそうに何度も頷く。
「特に子猫は好きなんだ〜」
みんなは杏奈ちゃんの可愛さに癒される。
「だけどさ」
小塚くんが当惑したようにつぶやく。
「ここ、最上階だよ。どうやって上がってきたんだろう」
そうだよねぇ。
出入口は、カードキーがなかったら通れないんだし。
「このフロアのスタッフか、それとも工事関係者の誰かが連れてきて、忘れてったんだよ。」
若武はそういったけれど、それに素直に頷くほど、私は子供じゃなかった。
だって無理があるじゃん。
猫を忘れるなんて、あり得ないもん。
「もしかして、非常用の階段を上ってきたとか?」
私がそう言うと、上杉君が片手を猫の手みたいに丸めて突き出した。
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アーヤ(プロフ) - 住滝良さんのと、少し文が違って「ここ、本文あれだったよなw」って楽しいです! (5月11日 21時) (レス) @page47 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
アーヤ(プロフ) - すごく面白いです!このまま、ストーリ続けてください。(あれ、完結してたっけ?)少しだけわがまま言うと、kzの皆は彩の親友(恋人?)ダァーッ! (5月11日 21時) (レス) @page37 id: d9605ef4e5 (このIDを非表示/違反報告)
桜@ひなた - 面白すぎです!私はアーヤと若武推しです! (2023年2月12日 10時) (レス) id: fb711c9d23 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - まこさん» ありがとうございます!!黒木くんかっこいいですよね! (2020年10月30日 23時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
まこ - すごく面白いです! 私も黒木くん推しです! 更新待ってます! (2020年10月30日 17時) (レス) id: e335c0e9f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年3月13日 20時