笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ17)

今日:3 hit、昨日:48 hit、合計:226,819 hit

第64話『可愛いアーヤ』ページ17

杏奈side

私たち3人がM＆Mに着くと、そこにはドレスを着た彩ちゃんがいた。

とっても可愛い！

「おお、これは、これは。」

黒木くんが彩ちゃんに微笑む。

「素敵だ。Vous êtes chic dans ce costume.」

何語かな。

よく分からないけど、とりあえずすごいことだけはわかる。

黒木くんは彩ちゃんの前で片膝をつき、上半身を倒すようにして深々とお辞儀をした。

「よくお似合いです、姫君」

私は彩ちゃんに駆け寄る。

「すごい可愛いよ、彩ちゃん！めっちゃ似合ってる！」

彩ちゃんは照れたように少し俯いた。

「どうした、上杉先生」

若武くんがからかうような声を飛ばす。

「姫の美しさに、硬直か？」

見れば、上杉くんはドアのところで彩ちゃんを見たまま立ちすくんでいたのだった。

それに気づいて、みんなが笑うと、上杉くんはくるっと身をひるがえし、出ていこうとした。

あ、帰っちゃう。

黒木くんなあわてて追いかけ、なだめて連れ戻してきた。

「あと一度でも言ってみろ。」

上杉くんは若武くんを睨む。

「もう戻ってこないからな。くだんない無駄話なんかしてないで、さっさと会議を始めろよ」

短気は損気だよ、上杉くん。

私は苦笑して、彩ちゃんに再び目を向けた。

こんな素敵なドレス、私も着てみたいな。

でも、到底縁のない話だな。

着るとしたらウエディングドレスくらいか。

「じゃ諸君、テーブルについてくれ」

若武くんは、その顔にまだ上杉くんをからかうような笑いを残しながら、それでも重々しく言った。

「会議を始める」