笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】

第63話『嫌いになった？』 ページ16

杏奈side


気まずそうに目を合わせようとしない二人に、私は優しく笑いかける。

「全然大丈夫だよ。あ、でも、山本くん的にはよくないか」

私は人差し指を口元に持ってくる。

「他の人には、今日見た事はナイショだよ」

黒木くんは肩をすくめる。

「神崎って、普段からあんなふうに告白されるの？」

「うーん。まあまあ、ぼちぼちですね。」

「モテるんだね」

なんだか棘のある言い方だった。

いつもの黒木くんらしくない。

試されているようなそんな気がして、少し違和感を覚える。

私はニコッと笑う。

「えー！モテてたらいいな〜」

無邪気に笑ってさえいれば、相手は私に警戒心を抱かない。

「やっぱり、模範解答だね」

黒木くんが呟いた。

小さな声だったけど、私に聞こえていないわけがない。

・・・この人、気づいてるの？

上杉くんが怪訝な顔で私を見る。

「あんなフり方だと、相手は全然神崎のことを諦めきれないだろ。もっとはっきり言った方がよくないか？」

私は笑顔が固まる。

・・・上杉くんってほんと、根は優しいよね。

「上杉くんって、誰かから嫌われてもあんまり気にしないタイプでしょ」

私は上杉くんの前に行き、真っ直ぐに目を見つめる。

上杉くんは驚いたように目を見開いて、私を見下ろした。

「私は違うの。誰か一人にでも嫌われたら、意味が無いし、生きている価値がない。」

「大袈裟じゃね？」

「そう思うのは、上杉くんがありのままの自分を受け入れてもらえてるからだよ」

私は一歩後ろに下がって、空を見上げる。

「私からしたら、上杉くんがちょっと羨ましい」

それでも私は、自分を捨てて生きているから・・・。

「神崎は、ありのままでいれてないのか？」

「どうだと思う？」

上杉くんは少しイラッとしたように目を細める。

ちょっとからかいすぎたかな。

「そんな怖い顔しないで。かっこいい顔が台無し」

「そろそろキレるぞ」

私は肩をすくめて黒木くんに目を向ける。

黒木くんは少し笑うと、上杉くんの肩を抱く。

「まあそうカリカリするなよ。それより、M＆Mに急ごう」

上杉くんが冷たい目を私に向ける。

私は眉を下げて笑う。

「嫌いになった？」

上杉くんと黒木くんは片目を細める。

「私の事、嫌いになった？」

2人は顔を見合わせて仕方なさそうに笑うと、足を進めた。

そして、私に背中を向けたままこう言った。

「こんなことで嫌いになるわけないだろ」

私は少し笑って、2人の後をついて行った。

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