3_赤いカチューシャ ページ4
「イーブイ〜…可愛いね〜」
「ブイブー…」と不満げな声を漏らすイーブイを無視して、私は顔をイーブイの頬にすりすりと押し付けていた。
因みにお兄ちゃん曰く恐らくオスだろうとのこと。
「あはは、すっかりなついたみたいだな。サヨリが」
「んもう、お兄ちゃんってば。からかわないでよ〜」
頬を膨らませて怒る私だったけど、からからと笑うお兄ちゃんにつられて「あはは」と笑い声をこぼした。
「あっ、そうそう!すっかり忘れてた!」
はっとしたようにお兄ちゃんがナップザックの中をかき回し始める。
そして、すぐにお兄ちゃんの手に中くらいのサイズの青いビニール袋が持たれた状態で出てきた。
「はい、これ。誕生日プレゼント」
目を輝かせて受け取る私。
「えっ、いいの!?ポケモンを捕まえるのを手伝ってくれたのに、プレゼントまで用意してくれるなんて…!」
「やだなぁ、手伝ったって言ったって、別に俺はマリルリを貸す以外には何もしてないだろ」
それに、とお兄ちゃんが続ける。
「俺、女の子が喜ぶものとか分かんないからさー……それ、気に入るか分からないし」
言われて、手元の袋に目を落とす。
触った感じは、なんというか……不思議な感じだ。
真ん中が無くて、でも丸い外枠はあって、上の方に何かあるみたいな…。
こんなに平べったいのに、まさかドーナツなんて入れてる訳ないし。
うーん、と考え込む私を見て、お兄ちゃんが「おいおい」と呆れたように笑った。
「開けてみろよ。考えるより手っ取り早いだろ」
「そ、そうだね…」
言われるままに、袋のセロテープを剥がして中身を取り出す。
…あっ
「かわいい!」
それは、真っ赤な布のカチューシャだった。しかも、ただのカチューシャじゃなくて大きなうさみみのリボンがついている。
お兄ちゃんがほっとしたように微笑を浮かべた。
「気に入ってくれたみたいでよかったよ」
「うん、私気に入った!」
早速頭に付けてみると、何だか分からないけど世界が変わったみたいにわくわくした。
「どうかな、似合う?」
少しの気恥ずかしさを感じながら問うと、お兄ちゃんは頷いた。
「ああ、似合ってる。サヨリには赤がよく映えるな」
「はえる…?よくわかんないけど、ありがとう!」
えへへ、と笑う私の横で、イーブイも少し嬉しそうに鳴いた。
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