2_始まりの日 ページ3
「お兄ちゃん、見て!あのポケモン!」
あの悲劇から二週間後。
その日は私の誕生日だった。
10歳の誕生日には私のポケモンを捕まえに行こうとお兄ちゃんと約束していた私は、出歩いてから早速一匹のポケモンを発見した。
隣のお兄ちゃんが「おっ」と興奮気味の声を漏らす。
「あれはイーブイだな。…この辺にいるもんなのか…?」
「私、あの子がいいな!」
私の声を聞いたお兄ちゃんは「まあいいや」と小さくぼやいてから、私を見やった。
「とりあえず、俺のポケモン貸してやるから捕まえてこい。ボールはあるんだろ?」
「うん。モンスターボール、さっき買ってきた!」
赤と白の球状のカプセルをバッグから取り出して見せると、お兄ちゃんは「よし」と頷いた。
「じゃあ、逃げないうちにやってこい!」
「ありがとう!」
私はお兄ちゃんからポケモンの入ったボールを受け取り、イーブイに向かって駆ける。
私の足音に気がついたイーブイが、弾かれたように振り返った。
「イブブッ!?」
「えーと、イーブイ!…私とバトルしよう!」
言うが早いか、私は右手に持ったモンスターボールを放り投げた。
ボールから出てきたのは、お兄ちゃんの相棒であるマリルリ。
それを見たイーブイは威嚇の体勢で構えた。
「よっし…マリルリ、えーと…バブルこうせん!」
私の指示を聞いて、マリルリが泡を連続で吐き出す。
「イブブッ!!」
イーブイに当たったのを見て、私は新たな指示を出した。
「しっぽをふる!」
これは相手の防御力を下げる技。
「ブイ!」
イーブイは立ち上がり、目にも止まらぬ速さでマリルリへアタックした。
でんこうせっかだ!
「マリルッ!!」
吹き飛ばされるマリルリに、慌てて「大丈夫?!」と声を掛けるとマリルリはイーブイを見据えたまま頷いた。
「よし…とどめだよ!アイアンテール!」
マリルリの尻尾が変化し始める。
「マァァリル!」
「ブイブーーッ!!」
イーブイにマリルリのアイアンテールが叩き込まれた所で、バッグから新品のモンスターボールを取り出す。
「いっけー!モンスターボール!」
そしてそれを大きく振りかぶってイーブイへ投げた!
急いで顔を上げるイーブイが、私の投げたボールに吸い込まれていく。
そのまま地面にボールは落ち、一揺れ、二揺れ……
ごくり、と固唾を飲む。
そして、三度目の揺れの後、ボールがカチリと音を立てた。
興奮を抑えながら、駆け寄ってボールを拾い上げる私。
ボールを片手に、頭上に手を上げて喜んだ。
「や…っやったああ!」
その日が、私がトレーナーになった日だった。
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