十日目 ページ10
「まだなん？」
「いや、知らんよ。気がついたら居るんやって」
「ほんまにお化けみたいやん」
「やめてよ、そんなこと言わないで。殴るよ？」
四人で机を囲み話していると、ふとカーテンが揺れた。
「お？来た？」
嬉々してカーテンを開けるシャオロン。
しかし、そこには誰も居なかった。
「なーんや...ま、わかっとったけどな。風やろうし」
呆れたようにカーテンを戻すシャオロン。
暗くなった室内に、時間が経つにつれ目を泳がせる鬱。
「...やっぱり、居ないんじゃない？」
ひとらんらんの発言に「絶対居る！」と言いはる鬱。
ひとらんらんやオスマンは哀れみの目を鬱へと向けた。
鬱は手を握りしめ「居るんや、絶対」と震える声で言い張った。
「...なら、待ったらんとな」
シャオロンが寝転びながらそう言う。
シャオロンが発言すると思っていなかったのか、オスマンとひとらんらんは目を見開いた。
鬱は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をした。
そんな鬱の表情を見たシャオロンは吹き出した。
「お前、表情ヤバイで」
そこまで笑わなくても、と言いたくなるくらい腹を抱え笑うシャオロン。
笑いすぎでか流れた涙を拭いながらシャオロンは鬱を見た。
ようやく落ち着いてきた、というくらいのとき。
ゴト、と言う音が部屋のベランダから聞こえてきた。
四人の目線は確かになった音の方向へと向いた。
「...音、したよね」
「...うん」
さっきまで楽しそうにしていたシャオロンはその方向を見て目線を外さない。
「誰や？」
シャオロンはそう言いベランダを睨み付けた。
声は聞こえない。
ベランダのカーテンを掴むと足元から猫の鳴き声が聞こえた。
「え？」
シャオロンは警戒心を消しカーテンを素早く開いた。
黒猫がそこには居た。
背後にある月光に照らされて黒い毛並みが光っている。
「猫やん。大先生、中入れてええ？」
「別にええけど...そんなに猫好きやっけ？」
「いや...」
シャオロンは室内に猫を招き入れ、その腹を見た。
「やっぱり」
「え、なにこれ」
腹には小さなメモがつけられていた。
「上から透明の紐が見えたんよな」
シャオロンは紐をほどき、そのメモへと目を落とした。
「...はぇ〜、」
シャオロンは読み終えるなりそれをオスマンへと受け渡した。
それに目を通したオスマンは、それをひとらんらんへ、そして鬱へと回った。
「...今日は来んのか。」
今日はいけない、という文字の羅列に鬱は安堵のため息をついた。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
