四十七日目 ページ47
数週間後、Aが珍しく昼間に校舎を彷徨いて遊んでいると、グルッペンが近寄ってきた。
「質問は良いか？」
『う〜ん、私は平気だけど、大丈夫なの？』
「俺は大丈夫だ。二人で話がしたい」
Aは周りを確認してから頷く。
『一応人がいないところで遊んでたから良かったよ。
良く起きてること知ってたね』
「あやめが飼育小屋の前に居なかったからな」
Aの足元に絡み付くあやめへとグルッペンは目を落とした。
釣られるようにAを目線を下げる。
『あやめ、彼処好きだもんね...それで、質問って？』
「鬱のことなのだが...」
グルッペンのその言葉に『あー、鬱？』と声を漏らすA。
『私、暫く会ってないよ。』
そうAが言うとグルッペンは表情を崩し目を見開いた。
どうやら、Aは毎日会ったと思っていたらしい。
「そうか...アイツ、学校来てないんだよ」
『寮には？』
「居るには居るんだがな...中々部屋を出てこない。」
『部屋に何かあるとかは知ってる？』
「...どういうことだ？」
Aは楽しそうに笑った。
グルッペンはそれを見て難しそうな表情を浮かべる。
『まぁ、私は鬱の部屋に入れない理由を知ってるだけだけど』
「...理由？」
くす、と笑うA。
内容は笑えるようなものではないのだが。
『私、鬱に一定以上近づくと倦怠感があるんだよね』
「それはどういうことがあってなんだ？」
『でもなぁ...』
口を尖らせるA。
グルッペンは不思議そうに首をかしげた。
『私が今望んでるのは彼の幸せだから、今幸せそうだし私から言うのは辞めるよ』
Aはそう言い微笑んだ。
グルッペンは「そうか」と残念そうに呟いた後、授業があるからと離れていく。
そんな後ろ姿を見送るA。
足元に居るあやめは良いのか、と言いたげにAを見上げた。
『う〜ん...
でも、あの感じだとなんかしてくれそうじゃない？そしたら、私も見に行けるし』
先程は嗚呼言ったものの、内心不安なAは密かにグルッペンがどうにかしてくれることを祈りながらあやめを抱き上げた。
『...鬱、間違った道に進まないと良いのだけれど』
ね、と顔を下げたAにあやめはどうでも良さそうに鳴いた。
先程まで心配してくれてたとは思えない変わりように、流石猫だと苦笑いを浮かべた。
Aはそのまま目を閉じ、姿を消していった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
