69個 ページ19
チャイムの音で、母さんのスマホから目をそらす。
あまり回っていない頭で玄関を出ると、男性が立っていた。
...知らん人や。
急いどったせいで、誰が来たんか見とらんかったのが仇となった。
警戒しているのが分かったのか、誤解を解こうと焦り出す男性。
「あー、なんだ...君の、お母さんの彼氏なんだか」
先ほどまでみていたスマホの内容が頭を過る。
そこには、知らない男との連絡があった。
名前は、確か...
『色盲、さん...』
「あれ、俺のことを知っているのかい？」
彼女は教えないと言っていた気がするのだが、と首をかしげる男性。
『さっき...母の、スマホを見て...』
「なるほど。」
納得したように頷く男性。
この男性は彼氏、ということは分かったが何をしに来たのだろうか。
『...何しに来たんですか』
「君の親戚に聞いたんだ。君を引き取れるような人が居なかったと。
俺は、君のお母さんから"もしもあの子が一人だったら、助けてほしい"と言われたんだ」
母さんから...
信じてええんかな...
「どうか、信じてほしい」
顔をあげると、悲しそうな顔で目を合わせてきた。
...この人を信じることは出来ないけど
母さんを、信じようと思う。
頷くと、男性は安心したような顔をした。
「それで、引っ越してほしいんだけど」
...マジか、こんな頻繁に引っ越す人おりゅ？
でも、お蔭でまだ出していない荷物もあったから、簡単かもしれへんな。
『いつ、ですか？』
「そうだね...Aちゃんの、暇なときでいいよ」
名前を呼ばれ、本当に母さんから話を受けていたんだと改めて思う。
『でしたら、来週はどうでしょう？』
「来週かい？それまでご飯とかは...」
『自分で出来るんで大丈夫です』
「そうか。わかった。連絡は...お母さんの方で送るね」
『はい』
男性は理解したのか「またね」と家へ帰っていった。
...引っ越し、準備か...
それだけなら直ぐに出来る。
なんなら明日にまでには仕上がる。
でも、もう少しだけ此処に居たかった。
『...よし、ご飯作るか』
立ち上がり昼食の用意をする。
...にしても、あの人子供慣れしとったな。
お子さんおるんかな。
あの人を父さん、って呼ばなあかんのかな。
色んな不安が胸につもる。
...でも、大丈夫やんな？
難しい、と思いながら料理を仕上げていく。
出来たものを並べ、一人で食べ始める。
もし、あの人にお子さんおったら...
兄弟とかに、なるんかな...？
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年1月14日 22時
