祝！開院 ページ3
『春爛漫なこの日、このような大勢の皆さま方に見守られ、このクリニックを開院させるに至りましたこと、誠に感慨深く……』
翔の院長としての初仕事は、セレモニーを締め括る、この挨拶。
いつもどんなこともサラッとこなして、悠然としている翔が、珍しく数日前から緊張した面持ちで何度も練習を繰り返していた。
「失敗したら、雅紀が恥をかく」
って、頻りに雅紀のことを気に掛けて。
紆余曲折あって、最終的に院長に就任した翔だけど、このプロジェクトが始まった時は、雅紀が院長になるはずだったから。
だけど雅紀は全く気にしてなんかいなくて、逆に『気が楽で良い！』って喜んでいるぐらいなんだけど。
翔は几帳面で真面目過ぎるから『横取りしたみたいでヤだ』って(笑)
病院を辞めて1年。色々あったけど、こうして無事開院にこぎつけられて本当に良かった。
半年前はどうなるんだろう？ってこの僕でさえ不安になる日々が続いていたから…
「智にぃ、どうかした？」
僕が思いに耽っていると、いつの間にかすぐ横に来ていたゆかが心配そうな顔で覗き込んでいた。
「別に何でもないよ。
ちゃんとここまで来れて良かったなぁって思ってただけ。
ゆかもお疲れ様。奥さんとして一杯頑張ったもんね？」
労いの言葉を掛けると、ゆっくり首を横に振ったゆかが、
「ううん。みんながいてくれたから…
智にぃや翔にぃはもちろん、和や潤がいなかったら今頃どうなってたか。考えもつかないけど…」
って。
この1年余りを雅紀の妻として支えて来たゆか。僕たちとはまた違った感情で今日という日を迎えたんだろう。
その目にうっすらと涙を浮かべ、言葉少なに語るゆかを僕は万感胸に迫る思いで見ていた。
ざわざわと周囲が騒がしくなって、やっとセレモニーが終わったんだと分かった次の瞬間、
「あ〜あ、やっと終わった〜」
この場に相応しくない雅紀の声に、ハッとして顔を上げる。
「なになに？どしたの、2人とも？」
続け様に言う雅紀。
「何でもない(笑)
ただ、嬉しいなぁって染々思ってただけ。やっとここまで来れたなって」
コロコロと表情を変える雅紀が、今度は妙に真剣な顔をして、
「ホント今までありがとうございました」
って、深々とお辞儀をする。
「なにぃ、今更そんな他人行儀にー」
ゆかが僕の代弁者の様に言って、雅紀の肩に手を置いた。
「いや、こういうことはちゃんと言わなきゃ。ずっと言わなきゃって思ってたから」
雅紀はホントに真面目だね…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 545人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虹(プロフ) - ebi信号さん» こんばんはー！コメントありがとうございます(^O^)ワクワクしてもらえて、私も嬉しいです♪これからもよろしくお願いします(^o^ゞ (2019年4月12日 22時) (
レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - profile読んだだけで、泣きそうになってしまった。ワクワクとホッと安心感です。この世界を続けてくれて、残してくれてありがとう…。 (2019年4月12日 0時) (レス) id: 7ab42f2331 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 虹さん» ありがとうございます！こちらこそ(^-^)/ (2019年1月2日 16時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - 琴子さん» 良かったぁ(^O^)これからもよろしくお願いします(^o^ゞ (2019年1月2日 13時) (レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 虹さん» さっそくにありがとうございました！見れました＼(^o^)／ (2019年1月2日 13時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虹
| 作成日時：2018年12月24日 18時
