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「…ううん、なんでもないよ。」
彼を見てると、何故かほかほかと暖かくなる胸に手を当てながら目を細めて首を小さく傾けて言った。
アリババはその久しぶりに見た心から優しい笑みにドキッとしながらも、3人は食事を始めた。
「そういえばその蛇は？」
「体に巻くのが王族の習慣なんだって！シンドリアの気候じゃ無理だったらしいけど。」
「だから代わりに鎖なんか巻いてたんですね？」
ジュースの入ったコップに口をつけながら代わりに教えるAにシャルルカンは俺に教えさせろとつっこんだ。
「にしても、師匠が王様になったのは意外でしたよ！」
「なんだと〜？」
「だって、シンドリアで俺に言ってたじゃないですか。」
『俺はシンドバッド様に一生ついてくって決めたけど…1国の王子が他国の王の下についてていいか簡単に決められねえ』
「だから、故郷には戻らない気なのかなと…」
「いや、戻る気だった。」
「えっ？」
「悪いなアリババ。これは決まってたことなんだ。「シンドリア王国が世界中と同盟を結び、平和な世界を作る」ってな！その志には、もちろんこれからもついていく。でも俺には、別の個人的な願いもあった……
自分の国へ帰ること…戦争の憂いがなくなり、エリオハプトの内輪揉めも落ち着いた……」
「そうだったんですね。」
「ああ。シンドバッド様のおかげだ。感謝してる！」
「そうそう、シンドバッドさんのことなんですけど、師匠はどう思いますか？Aも！」
「はァ？」「えっ？私？」
シャルルカンは眉をひそめ、Aは会話に参加せずジュースをちびちび飲んでいたが驚いたようにコップから口を離した。
(俺がいなかった3年間を知ってる人に、シンドバッドさんのことを聞きたい。師匠は、Aはどう思ってるんだろう？今のシンドバッドさんのことを……)
「「……」」
シャルルカンとAは無言で見つめ合い、そしてまたアリババをみた。
「以前と変わったとかありますか？」
「そりゃあ、」「変わったよ！」
2人が重ねるようにして同時に言った。
「え！？」
「前よりもっと凄ぇ人になったんだ。「戦争のない平和な世界を作る」。それを初志貫徹、ついに成し遂げちまったんだ。」
「うん、いい意味で変わったんじゃない？」
(初志貫徹……師匠ほど近くにいる人から見ても、本質は変わってないってことかな？Aは確か本質を見抜く眼を持っていた気がするけど…)
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
