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「ふふっ、いやあ……」
「……？」
「おもしろいですね、新世界！」
「!?」
Aは目を輝かせながらそう言った。
そして、「情報」が「金属器」より強い武器になるなんて面白いと繰り返す。
だったら、煌帝国のいい情報を世界中に伝えて行ければ…一気に逆転することだってできる！と笑って。
「！」(折れない人だ……)
「むしろ、私たちはこれからももっともっといろんなことができる。そんな気がしてきたんです！」
アリババが部屋にやってきてから、紅明はまた同じ話をアリババにしたが、反応はAと変わらなかった。
紅明はただ、さすがだなと思うだけだ。
昔、商隊にて営業していた経験のあるAと、10年前、商業国バルバッドの王宮で教育を受けたアリババにとって、ラシッド王の血を引くアリババにとって、シンドバッドの作り上げた新世界の仕組みは妙にしっくりきていた。
このことも、運命の歯車を大きく回転させる一因になるのだった。
(きっと、こんなことはあの子にとって「ちっぽけなこと」でしかないのかもしれない。
でも、私はこの世界が楽しくてたまらない！
こうやって、困難を乗り越えていく楽しさを知れたのは、あの子のおかげ。
あの子が、私には見えない、とても遠いところを見ているんなら……
「灯台もと暗し」の、灯台もとを見てあげるんだ！
あなたの分まで、私は楽しむからね！)
＿
羨ましい、そのような感情はとうの昔に捨てたはずだ。
いいや、昔と言っても、ついこの間かもしれない。
もう何も感情は湧いてこない。上手くやっているなと、そう思うだけだ。
少し試して見たが、やはり彼女は大きな行動には出ない。
変わることは無い。このまま進めば、私だけが知る未来になるのだ。
私も昔は……あんなふうに。
あんなふうに、目の前のことに全力だったのだ。
難しくて、辛くて悲しいことも、
彼らとなら、なんでも乗り越えられる気がした。
その壁を壊すのがたのしかった。
彼らがいたからこそ、だ。
きっと、未来で誰かを救うから。
未来の私を作るから。
そんなことを思って、私は全力だった。
今思えば、あれがきっと私の人生の所謂青春だったんだろう、と思う。
その時には気がつけない、
嫌な事しか目につかない。
でも、時が経てば……
ああ、幸せだったんだなと、気がつくのだ。
私は、彼女の喜びがちっぽけなものにしか見えないけれど、
それがほんの少しだけ、悲しくなった。
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
