第303夜 新時代の戦い ページ47
「俺とシンドバッドさんがライバル同士？「商会」の代表として？」
「アリババくん。「煌帝国商会」代表としての君の活躍は聞いているよ。バルバッドにも行ったそうだな？」
アリババは頷く。
「なぜ君はその時、バルバッドに王として返り咲かなかったんだ？バルバッドはもう共和制だからと、臣下に拒絶されたのか？」
「いいえ…ただ国に戻らないと自分で決めただけです。俺はもう、王子じゃありません。」
「そうか。理解しがたいな。俺は昔、その王族の血とやいうものが喉から手が出るほど欲しかったものだが……」
「……？」
「君はあっさり捨てられるんだな。なんだか…羨ましい気がするよ。」
(……？何を言おうとしているんだ？この人は……)
「とにかく、煌帝国が再軍備しているという噂が世界中に流れているが……
それを俺が払拭してやらねばならない道理がないんだ。」
(た、たしかに。)
「アリババくん。君も商業王国バルバッドの王子なら、多少わかるだろう？『商会』の未来には3通りしかないんだ。
他より儲けられずに潰れるか、もしくは他の大商会に吸収されることで生き残るか。
そして…………
ほかの全ての『商会』にうち勝ち、最後の一人になるか、だ！」
「最後の一人になるまで戦うだと!?」
(シンドバッドさんは、ある意味3年前より過酷な戦いの世界を作り上げたんだ…
同盟関係すら成立しない戦争の世界！だったら確かに、助けを求めるなんてお門違いだよな…
むしろ、敵相手にならどんな汚い手でも使うはずだ……
……どんな汚い手でも…？)
「……」
「……まさか、煌帝国が再軍備っていう噂を流したのは……
シンドバッドさんですか？」
「もし、そうだとしたら…どうだというのかね？」
シンドバッドは平然と微笑みながらそう答えた。
「アリババくん…商売の世界は厳しい。俺は1度失敗して、奴 隷身分にまで落とされたことさえある。
君も今後はもっと、慎重に戦うといい。俺の息子だという君への、これはアドバイスだよ。」
「……！」
(くそっ…何も言い返せねぇ……！)
そうしてアリババは煌帝国に戻ってきた。
「みんな…すまねえ。噂を撤回できなかった。「転送魔法陣」のための商館は、どの国にも建てられねぇ……」
「もうすぐ大量の食料が実ってしまうのに、輸送手段がないのでは…売ることが出来ない。」
「どうするんだ……!?借金が返せなければ、煌帝国は解体されてしまう……」
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
