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「A、」
「？」
紅明が、ボソリと後ろから話しかけてきた。
Aは腕を組みながら振り返ると、ボソリと小さく聞いてきた。
「原因がわかったと言っていましたが、もしかしてその原因の元って……」
「……はい、シンドバッドです。」
「…………やはり。」
「この世界も便利になりました。より多くの情報が、気軽に、大勢に回るようになった。情報がより多く発信されている国こそ、噂が広まりやすいです。
けれど、気軽な情報発信に隠されるデメリットは、嘘が流れた時に広まりやすい、ということです。
そしてまた、根本的に嘘が流れやすい。
煌帝国には、他の国では普及しているニュースが少ないのが、情報収集が遅れる原因となりました。
おそらく、シンドバッドが転送魔法陣が普及すると飛空挺の需要が減ることを恐れて情報操作をしたのだと思います。
彼になら容易いでしょう。
逆に、あの1つの噂のニュースでその事を知った国民は、確認する術がありません。
ニュースが一つだけではなく、逆に情報が溢れかえっている社会だったら、より多くの情報を見比べ、正確な判断を取ることが可能ですが、まだニュースや情報発信の技術はそこまで発達していませんから、ただ国民の間で噂が広がるだけ。
なにより、確かめる前に煌帝国には前科があるわけですから、そう言われてみればそうだ、と思い出す国民がほとんどなのだと思います。
勝手に国民が誤解した以前に、勝手に嘘の情報が流されていたんですよ。」
「……それを何故、アリババ殿らには話さないのですか？」
「……まだ、ただの予想ですしね。決めつけるのはよくありません。決めつけが、情報操作を広め、嘘の情報を広める原因にもなっています。」
「まだだ…まだ終わらねぇ！」
宮殿を飛び出していったアリババを見ながら、紅明は隣のAを見下ろす。
「…行かないんですか？」
「会いたくないんです。シンドバッドに。」
「……何かあったんですか。」
「…………あったと思います？」
「…まあ、別にどうでもいいですけど。」
「……はあ、ほんと、冷たい男ですね練紅明って男は。」
ボリボリと頭を搔くAに、紅明は目を細めた。
「名前呼びすぎです、謹んでください。」
「へへ、忘れてました。」
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
