5 ページ40
確かに、アリババはササンとアルテミュラにも訪問した。
勿論Aもついて行ったが、彼女の存在が放送されることは、1度もなかった。
だがAはスパルトスとピスティと久しぶりに対面し、楽しく会話を弾ませていた。
スパルトスは、以前よりも柔らかくなっていたけど、それでもやっぱりAの前だと無理をすることを忘れた。
Aは彼の疲れを察知した瞬間、ちゃんと休みなさい、こういう時に自らの権力を振りかざすべきなのですとお説教をした。
王になんて口を聞いているんだと周りの兵士にとっ組まれそうになったが、スパルトスがそれを阻止し、黙ってその説教を嬉しそうに聞いていた。
「その言葉、言い慣れていますね」
「よくわかりましたね！はい、旦那にも散々言っていましたから！でも、スパルトスさんはまだ奥様がいらっしゃらないから、確かに仕事を誰かに任せることは難しいですね。私は、私がいるから休めと怒っていたんですけど。」
スパルトスは、何故かエプロンをしてお玉を持ちながらプンプンと疲れきった練白龍に怒るAを安易に想像できた。
「旦那」と言う言葉が彼女の口から出てくるのが、なんだか不思議で、違和感があって…
少し、悲しい気持ちになるけれど。
「貴方が私の妃だったら、安心して任せることが出来たんですけどね。」
目を瞑りそう微笑みながら言うスパルトスに、Aは怒りながら動かしていた腕をとめ、ポカンと口を開けながらスパルトスを凝視すると、制止が解けたように眉を下げくしゃりと笑った。
「ありがとうございます、でも私にはもう、誰かのお嫁さんができる自信はありませんよ。」
あ、
「でも、なりたくないわけではなくて。自信はないけれど、でも、誰かと家族になって、最後死にたいです。」
あの子なら、どんな言葉を続けたんだろう？
『結婚なんて、相手が私を愛す理由をあげるだけですから。
私は、結婚なんてしなくても愛しますよ。
そうですね、でもね。
相手と共に死ねるというのは、素晴らしいことです。
私も、もしそんなことが出来るのならば、生涯を共にすごし、最後も共に死ねるのならば、それは幸せだと思います。
でもね、
そんなこと、できないんですよ。
相手が、自分の死を私に見届けて欲しいというのなら、私は見届けますけどねえ。
でもね、
でもね
私は、大切な人に、死を見届けてもらうことは、出来ませんから。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
