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それはそれは、幸せな夫婦生活だったという。
楽しそうに、それを話すAを見て…
アリバハには、自然と白龍に対する嫉妬心や対抗心は湧かなかった。
そんだけ幸せだったなら、とにかく良かった、、とただ安心した。
やはり彼女には白龍があっていたんじゃないか、と思った。
……なら、なぜ白龍と離婚したのか……？
Aは、白龍と共に皇后を降りた理由は離してくれた。
そして、今からその後について……1番知りたいことについて語り始める。
「…本当は…」
Aは俯き、そしてまたこちらを向いて微笑んだ。
「本当は、皇后を降りた瞬間はまだ離婚していなかった。」
白龍は、皇帝をおりた時、彼女に聞いた。
『これからも、俺と一緒にいてくれますか？
皇帝という肩書きが消えても。』
白龍はその時思った、皇帝をおりることになった時思った。
もしかして、これが…彼女の言っていた「終わり」なんじゃないか、と。
限られた期間は、これにて終了というわけか、と。
だがAはただ微笑んで白龍を見つめるだけだった。
…白龍は虚しくなった。
この笑みが、白龍の願いを肯定するものなのか、それとも「これでもうおしまいだよ」と優しく諭しているのか。
いいや、どちらの意味もある、と思った。
どちらにしろ、彼女は自分との別れは。「終わり」は初めから覚悟していたわけで……
こんなに、その別れを悲しみ辛く思うのは自分だけだと思うと、とにかく虚しかった。
だが、笑顔のまま白龍の手を優しく握ったAに、
白龍は、逃がすまいか、と思った。
強く握り返した。
少し涙が浮かんで潤んだ、強い瞳で彼女を見下ろした。
彼女はその強い意志に微笑んだ。
Aという人間は、全ての人類を肯定する人間なんじゃないかと思った。
それが恐ろしかったけれど、そんな彼女に依存したい自分が確かにいた。
彼女は人に強い執着はしなかった。
けれど、人から執着はされた。
人を愛すけど、愛されることを、信じなかった。
終わりが、もうすぐだと分かっていても、
白龍は、最期まで彼女を幸せにしてやりたいと思った。
その、ずっと微笑むその笑みが、
母親のようで、もしかして、今までの夫婦でいた期間も……
幸せだったように偽ってくれていただけなんじゃないか、と思った、けれど！
でも、それでも白龍は、
彼女をまだ、愛し続けたかった。
だから、皇帝と皇后を降りても、2人は強く手を握りあったまま、共にすごしていた。
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
