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「…アリババ…」
じっとAの方を見たままのティトスの背中を、アリババは不思議そうに見た。
「やっぱり、なんでもないよ。僕はなんだか勘違いをしていたみたいだ！」
「えっ!?」
驚くアリババ。振り返ったティトスは笑顔だった。
「Aを疑う必要はないよ。ただ、グロリアの瞳の話を彼女にすることは、控えた方がいいだろう。」
「？それは、突然、どうしたんだよ？」
「今Aはその力を封印されているんだ。」
「封印？」
「そうだよ。堕転したことに関係がありそうだけど……とにかく！アリババが気にすることは何もない！」
アリババの肩に片手を置きニッと笑うティトスは、明らかに怪しくてアリババは怪訝そうな顔をしたが、
「まあ、気になったら落ち着いた後に本人に聞いてみろよ」
という言葉に納得し、この話は終えることにした。
▼
使いたかった訳では無い。
だが、この、ただでさえ不安定な現状況をより崩すことなどしたくはなかった。
この状況を打開し、完全に立て直すとなると、時間を要するだろう。
だがそれは、この力を使わなければ不可能であり、
私は私の力を存分に発揮することこそが正しいことだと、そう本気で思っていた。
けれど、この力を使う度…
なぜだか胸が痛むのだ。
わたしは、私の幸せを強く願っている。
なのに、なぜ、、
なぜ、こんなに辛いのだろうか。
でも、そりゃそうか。
相手は人間で、脳に手をかけるだなんてそんな「洗脳」みたいなこと、したくない。
私だって心はある。
これが良くないことだってのはわかってるんだ！
でも……それでも…
わたしは、、その通りに…
ううん、これからの未来で生きる私のために、
彼らの記憶を、
すこし
すこしだけ…
変えちゃう、だけで。
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
