再考.33［マギ］ (ページ3)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:7,906 hit

7 ページ3

「……お前の力はもちろん知ってる。だから、俺の行く先がわかる理由がそれだ。」

アリババは返事がなくとも話を続けた。

「でもよ…一目でも、姿を見せてくれやしないか？俺、この世界に戻ってきてからまだお前に会えてないのに、俺が行く国の人はみんなお前に会ってる。
正直、俺の手助けをしてくれる理由も知りたいけど、それはこの際置いておく。
なあ、なんでお前は、俺の目の前には現れてくれないんだ？避けてるのか？何か、会えない理由があるのか？
先回りしてくれてるのはありがたいけどよ、そのことを先に本人に教えてくれなきゃ、逆に困るっつーか…
いや、助かってはいるんだけど……」

段々と、アリババの声は弱くなっていった。

「アリババくん……」

ヤムライハは、そんな彼を見て思った。

やっぱり彼は彼女のことを、すごく好きなんだと。

どんなにえらい人にもものを言ってしまう彼だ。
物怖じしなくて、何事にも全力で……
もちろん、それは成長したからこそだが……

好きな人には勝てない。

それは、どんな人も共通なんだなあ、と。

［アリババ…］

「！」

やっと声が聞こえて、アリババはこれでもかと通信器を耳に当てどんな一言も聞き逃すまいかとした。

［ごめんなさい！別に、アリババのことを嫌ってるなんてことないのよ！絶対にね！］

「……え…」

やっと声を出してくれたかと思えば明るい声で、アリババは拍子抜けしたように目を丸くした。
初めの「アリババ…」が深刻そうな声だったものだから、なにか辛い事実を話されるものかと身構えていたのだ。

［いやー、私もアリババには勝手なことをして申し訳ないなって思っていてね！今、何から謝ろうか話そうか悩んでいたのだけど…あはは、変な空気にしてごめんね！貴方を困らせたかったわけじゃないのよ！］

「え、あ、おー！！そ、そっか…」

さっきの不穏な空気はどこかへ飛んでいき、アリババは直ぐにそのことは忘れ、彼女の声が久しぶりに聞けたことに、嬉しくて少し瞳をうるませた。

死んでからもずっと好きだった人の声。

「やっぱり、、変わんねーな！Aは！」

通信器を通してるから、生身の声とは違う荒さが目立つけれど、それでも彼女の声は昔と変わらなかった。

［……でしょ？私、なんも変わってないよ！］

「おう！いや、もっと元気さが増した気がする！最近楽しんでんのか？」

［そう！！色んな国を旅してるのよ！］