第299夜 レームの在り方 ページ14
_レーム帝国
「ティトス、ムーさん!!」
アリババはすぐに笑顔で彼らのいる壇上に上がった。
「よく来たな、アリババ!」
「君が生きていてよかった。」
ティトスとムーがそれぞれ喜びを顕にした。
「?Aもこっち来いよ!いちばんティトスが会いたいのは、Aなんじゃねーの?」
アリババが振り返り、階段の下からこちらを笑顔で見上げているAに声をかけた。
また、ティトスとAの視線が交差した。
「……ううん、わかってるよA、僕に気を使ってくれてるんだろう?」
「え?」
「……近くに行っても、いいかしら?」
眉を下げて笑うAに、ティトスは「…うん!勿論!」と笑顔で頷いた。
Aが壇上に上がれば、ティトスはすぐにハグをした。
こら、今は最高司祭なんですから!と注意するムーだが、全く言い方が強くない。
驚き、苦笑するアリババだが、Aはゆっくりとティトスの背中に手を回して、目を瞑り幸せそうに、今を噛み締めるように抱きしめられた。
「”その事”については、またいつかちゃんと教えてくれたらいいさ。僕は、君に嫌われるようなことはしたくない。」
コソリと、ティトスはAの耳元でそう呟いた。
「……ありがとう。ただ単に、私の中に元から混ざっていた堕転していたルフが成長してしまっただけ。支障はないわ。
だって私、何も変わらないでしょ?」
彼は彼女が宮殿に近づいた瞬間気がついたのだ、
嗚呼、彼女は完全に堕転している、と。
だから初め、少し警戒したような目で彼女を見ていた。
だが、愛する彼女には変わらない。
(…って、思ったんでしょ?)
Aはティトスの肩を掴み、下から覗き込むようにしてニッと笑いかけた。
(そうでしょ?頷いてよ。)
ティトスは笑顔でAを見つめた。
(「マギ」でも、やっぱ要注意なのは彼だけで…)
「うん、そうだね。
君の元気なところも優しいところも可愛らしいところも怒ったら手が付かないところも煽り癖があることも泣いた時は止まらないことも
きっと、何も変わらないんだろう。」
「……?」
傍から見れば、彼が言っていることは彼女との思い出で、
今もきっとそう言ういい所があるんだよね、という言葉にしか聞こえないのだが……
Aは直ぐに違和感を察して口角を上げ目を細めたまま首を傾げた。
「ところで……
その眼帯は、どうしたんだい?」
「!!!!!!!?!?」
笑顔で爆弾を落とした彼に、彼女はギチ、と歯を噛んだ。
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作者名:氷空音 | 作成日時:2022年6月30日 21時