第265夜 大戦の幕開け ページ16
「ファナリスの住む「大峡谷」の向こう側は、あくまでもこの世界の延長線上にすぎないんだ。だから残念だけど、僕にもアリババくんの居場所は分からない。ごめんね、モルジアナ。」
モルジアナは目から血を流しながらもなんとかユナンのもとへついたのだが、ユナンから有力な情報は得られなかった。
「……そ、そうですか……あれっ？「眷属器」が…反応しない…変だわ。」
足首の眷属器に触れるモルジアナを見て、ユナンは顔を暗くした。
「モルジアナ。バルバッドへ帰るなら急いだ方がいい、僕が送るよ。」
「？ハ、ハイユナンさん。」
＿
モルジアナがバルバッドに戻った時には、その場は悲しみに溢れていた。
刺された線香からふやりと漂う白い煙に、涙を流す見覚えのある従者たち。
誰の？
そう、彼の。
いま、そこの寝台で、
煌帝国の服を着せられて、眠っているアリババの。
「モルジアナ…おまえがいない間に、アリババはもう……」
トトは鼻を真っ赤にして涙を流しながら振り返り、モルジアナにそう伝えた。
「「……………………」」
ユナンは嫌でも想像していたのか、やはりそうなのかと顔を歪め、モルジアナは衝撃を受けていた。
ダッ
「あっ、待ちなさい君！」
誰かの制止の声も聞くことなく、モルジアナは台に登り眠る彼の元へ駆け寄ると、胸部分に両手を当てて揺らした。
アリババさん、アリババさん？と名前を呼ぶが返事はない。
いつも寝ている時の寝顔だった。
ガバッ！
胸に耳を当てた。
……後ろで聞こえてくる涙声しか、聞こえない。
「やめなさい。」「その人は、もう息を引き取ったんだよ。」
「まさか…………」
モルジアナは泣かなかった。ただ、汗がダラダラと流れた。嫌な汗だった。
＿＿
＿
「アリババちゃん、ジュダルちゃん…」
多くの兵士を後ろに連れた馬に乗る紅玉は、唇を噛み締め涙を浮かべていた。
「姫君、大丈夫っすかね？黄文さん！」
「腕の見せどころですよ姫君〜〜！」
従者もドキドキとしているようだった。
「煌帝国の戦はこれで最後だ。かたをつけてやろうじゃん。」
同じように多くの馬に乗った兵士を従える紅覇は、空を睨みそう言った。
「紅覇様…!!」
「白瑛将軍はやはり当面の帝都奪還作戦には加わらないんですね、紅明様。弟君を討つ決心がつかんのでは、部下の士気も下がるでしょうしね…」
「その話はもう口にするな。情に足をすくわれるのは、我々とて動揺だ。」
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氷空音(プロフ) - 海月ゆらさん» コメントありがとうございます！こちらこそここまで読んでくださってとても嬉しいです😭完結まで精一杯頑張らせていただきます❤️ (2022年5月23日 0時) (
レス) id: 6c8722363c (このIDを非表示/違反報告)
海月ゆら(プロフ) - 続編おめでとうございます！マギに再熱して色々な作者さんの小説を読ませていただいてたのですが皆さんマグナシュタットあたりで止まっていたりしていたので、ここまで書いてくださって本当に感激してます！！無理のない程度で頑張ってください(^^) (2022年5月23日 0時) (レス) id: 20614a99c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年5月17日 1時
