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「いや……
本当はそう思ったことも……1度もなかったかな？」
ダビデが彼を抱きしめた時、カッッと強い光が放たれ、
ドオオン
爆発した。
「ソロモン…！！」
『だがソロモン、これだけは覚えておけ。
『運命』とは決して予知ではないんだよ。あの女の場合、「仏眼」と別の世界からの訪問者であることの証が混ざり合い、そして複雑な力に変わってしまっただけでね。すべての魔導士が『運命』を知った時……私のように絶望するか……はたまた、いつか人間は、それでも『運命』に立ち向かい、奮い立とうとすることが出来るのか？
あの女も、今までは「未来」を見てきたから絶望しながらも立ち向かうことが出来ていたが、最期までの全ての「運命」を理解しても尚諦めないことが出来るのか？
私はその果てが見たいのだよ。そのためにお前にすべてを託そう。この杖が、その鍵だ。』
「ソロモン！」
ドッッ
ソロモンが地面に落ちた。
「……！？なぜこんなものを……！？」
彼の手にはダビデの杖が握られていた。
▼▼▼
「グロリア…頼む、目を覚ましてくれ……」
荒れ果てた地で、彼は愛する彼女にただひたすらに魔法をかけ続けた。
拾った両腕を持ってきて、接続部分の壊れた細胞を復活させる。そうすることで新しく両手を生み出すより格段に治療が早くなる。
内蔵はガラクタのようでもなんでもいいから、とにかく機能することだけを考えて作った。ルフに元の状態を問いかけながら、共に修復していった。
そしてなんとか治療が終わった。セイバーの体力も限界で、荒い息をしながら額の汗を拭った。
静かに呼吸をする彼女の顔を見つめて、唇を拭うと、偶然親指に着いていた真っ赤な血がついて、派手な口紅のように彼女の色のない唇に色を残した。
セイバーは彼女の戻った手を強く握り、額にあてながら涙した。
「居なくならないでくれ……頼むよ……たとえ君が……ほかの世界の者であろうと……未来を変えることが出来ず無力だと自分を攻めようと……俺はどんな君でも構わないよ。
変えることが出来ない未来なんて話さなくていいよ。俺に、君の気持ちだけを話してよ。
もっと、死ぬのが怖いって言ってよ。自分が死ぬんじゃなくて、周りのみんなが死ぬのが怖かったんだって教えてよ。
俺を置いていかないでよ。」
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年5月3日 18時
