1 ページ42
「あ、いや別にあなたを攻めているわけなんかでは…！」
急いで振り返った白龍から同時にAは目を逸らして海を見た。
「分かってるよ。そもそも、ただの従者である私に迷宮を紹介された方がおかしいんだよね。私はまだ小さくて無知だったから、力が貰えるなら、役に立てるなら…って、何も考えずに攻略したけど…
でもなんで白龍は、その誘いを断ったの？みんな受け入れて力を手に入れてたじゃん？」
「それは、俺が他の誰よりも「組織」の本性を知っていたから…
俺の家族は…皆「組織」に殺されました。父も、兄たちも…」
Aは目を見張ると、焦ったようにスカートを握った。
「あ、ごごめんなさい。聞いてたのに、また言わせてしまって…」
「別に構いません、1度や2度。
もっとも、その事実は「組織」と繋がる「ある者たち」により完全に歴史から消され、俺の姉すら知りません。」
「白瑛様も…！」
そっか、と自分を納得させるように俯くAの方を白龍は向いた。
「今もう一度この話をしたのは、実はわざとです。忘れてるかもしれないと思ったのもそうですが、前回話したのはどの道遠くない未来に世に知らしめる「真実」だったからです。
協力して欲しいシンドバッド王と貴方にだけは話しました。
しかし、今は何より……
「迷宮」で何一つ守れず、信用する要素などひとつもない俺を助けてくださった恩人のあなたにこそ、少しでも自分の本心をもう一度話しておきたかったのです。別れる前に……」
「…………」
Aも白龍を見つめる。
「妙な話をしてしまいました。そういえば、A殿は煌帝国に来る前は何処に？御家族はどちらに？」
「…………いない。」
Aは小さく夕方の冷たい息を吸うと、吐くようにそう小さく呟いた。
「私には、家族がいないんだよ。」
悲しんでいるようにも、怒っているようにも見えない、そのなんとも言えぬほんの小さな口角を上げただけの笑みは、初めて見るものだった。
「……白龍みたいな皇子様は知らないかもしれないけど、私は煌帝国の城の前に気がついたら倒れてただけの、怪しい子供だったんだよ。」
「…………た、倒れてた？それを、国が引き取ったと言うのですか？
まさか…国はそんな面倒なこと…」
「面倒なこと」と言ってしまったことに白龍はハッとし口を抑え、謝ろうとしたが、Aの言葉でかき消される。
「そう、私も面倒な生き方になっちゃった。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
氷空音(プロフ) - ももさん» ももさん！毎回コメントありがとうございます、とても励みになっています☺️頑張ります👍 (2022年3月16日 17時) (
レス) id: 5e2c75e263 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 続編おめでとうございます🎉一日に2話も出してくれて嬉しいです！無理しないでゆっくりと頑張ってくださいね！これからも応援しています‼️ (2022年3月16日 0時) (レス) @page3 id: 540177c56f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷空音 | 作成日時：2022年3月14日 23時
