187#取引の行方 ページ48
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交渉決裂か、と思われた取引。
だが、敦、鏡花、夜鳥が目の当たりにしたのは酷い病状で寝台に横たわるミッチェルだった。
「破産中に闇医院でも回されましたか……」
「あぁ、そうだ。もし彼女が今話せたらこう言うだろう。“この生命維持装置をすぐ切って、かかっている医療費を全額祖国の実家に送金してくれ”と。……そういう女性だ」
夜鳥は敦の服の袖を引いた。
隻眼の青い瞳と朝焼けの瞳がぴたりと合った。夜鳥は小さく笑って頷いてみせた。
「判った。取引する」
直ぐに移送の準備が取られ、三人はそれを見守った。車で探偵社員の隠れ家まで向かうとの事だった。
「国木田さんに怒られるかもって思いましたか?」
「うん、思ったよ。でも、駄目なんだ。苦しんでる人を見ると、みんな昔の自分に見える。
放っておけないんだ」
「……貴方はそれで良いと思う」
搬入が完了し、敦と鏡花が車に乗り込むが、夜鳥は「先に行って下さい」と云い、霧散した。
出発から間も無く、マフィアの隠れ家に広津が居た。その手には無線機があり、聞こえてきたのはフィッツジェラルドの声であった。
敦達が此処へ向かう、そして取引の話であった。
――「集合は二十分後。五番通りで……ではな」
「待て。何故、お前はこの隠れ家の場所を知って____」
プツッと切れた無線。
Aは既に何かを感じたらしく顔を顰めていた。
「探偵社復活の糸口ですって!」
「うん、これで希望が____」
「……妙だね」
『お父様、この取引は……』
鷗外はAの頭を落ち着かせるように撫でた。苦虫を噛み潰したように黙り込むA。
「ああ。如何やって奴はこの秘密の隠れ家を発見した?」
「そりゃきっと例の“神の目”とやらで……」
「そこだよ。この隠れ家が判ったのなら、探偵社などより軍警と取引すべきだろう。弱った探偵社より強大な《猟犬》に恩を売った方が利益が大きい」
『あの人は強い方、勝ちそうな側に味方する人』
「そうだね、Aちゃん。つまりこの取引____罠じゃあないかね?」
その場の空気が一気に凍り付いた。
その時、Aの影から夜鳥が戻ってきた。
「?」
「あぁ、お帰り。夜鳥君」
「只今戻りました」
『夜鳥……』
「?」
揺れ動く天秤の傾く方向は誰も解らない。
もう誰も、信じてはいけない。
(何が……)
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綺弌(プロフ) - Ratte*らてさん» 何回でもコメント嬉しいです(*´∀`*) リクエストの方、承りました! 頑張って練り練りしたら番外投稿しますので、またお知らせしますね! 有難う御座います!! (2018年11月26日 21時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
Ratte*らて(プロフ) - 綺弌さん» 改めて関連ランキング2位、御目出度う御座います!何回もコメントは失礼かなと思いリクエストは控えていたのですがリクエストよろしいでしょうか……!太宰さんと夢主ちゃんがいちゃいちゃしててそれに嫉妬する夜鳥くんお願いしたいです(夜鳥くん本当に可愛いんですよ (2018年11月26日 19時) (レス) id: 112e01abc9 (このIDを非表示/違反報告)
綺弌(プロフ) - Ratte*らてさん» いつもコメント有難う御座います! 趣味とはまたすごい(笑) そろそろ書き貯めの為に少しお休みを頂こうかと考えていたりします。待って下さる読者様の為にも頑張りたいと思います。 (2018年11月26日 18時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
Ratte*らて(プロフ) - 続編おめでとうございます!この小説を読むのが最近の1番の趣味になって来ています(笑)。更新スピードがやっぱり早くて心配ですが頑張って下さい!綺弌様を心より応援しております。 (2018年11月26日 18時) (レス) id: 112e01abc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺弌 | 作成日時:2018年11月26日 11時