Sanatorium. 2【文豪ストレイドッグス】

74#挿げ替えられた持ち主 ページ29

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『どの異能で私と遊んでみますか? 精神操作、掌握でも面白そうだけれど……。物理攻撃の方が好き? 一方的な蹂躙(じゅうりん)でもいいけど』




手帳をペラペラと捲(めく)りながら、相手にとって不足のない異能を探す。
精神攻撃なら【ヴォイニッチ手稿】でもいいし、それこそ【スリーピング・マーダー】なんて。
物理的に行くならば【アンナ・カレーニナ】とか。




「A嬢、何を……。我々と戻りましょう!」


『今は(・・)、厭だ』


「何故!」


『簡単な話。今の私の首輪を掴む人がお父様ではないから』


「首領では、無い……? では誰だと____」




私が着けているのはチョーカーは治さんからの贈呈品(プレゼント)。そして、ギブアンドテイクの関係が素晴らしく成り立つ。

だから____




『【冬虫夏草・“アンナ・カレーニナ”】』


「【羅生門】!!」


「はぁーい。二人ともそこまでー」


「なッ」




治さんは意図的に夜鳥に触れて【二重人格(アルターエゴ)】を解除し、続いて私の手を引いて腕の中に収めた。




「七十点。でも良くやったね、偉い偉い」


『!』




一葉さんが何かを云っているが、龍之介さんがそれを制して口を開いた。




「闇市で七十億の懸賞金が懸かっている。裏社会を牛耳って余りある額だ。そして、Aの懸賞金も跳ね上がっている」


「へえ! それは景気の良い話だね」


『何億になった……?』


「三百だ。まだまだ上がる余地はあるらしい」


『そう』




百が三百か。
皆は揃って私の異能を値踏みする。
そんなに良いもの……? 災厄を呼び込む異能なんて。




「探偵社には孰(いず)れまた伺います。その時、素直に七十億を渡すなら善し。渡さぬなら____」


「戦争(・・)かい? 探偵社と? 良いねぇ、元気で」




治さんはギュッと私を片手で胸に抱き寄せると、冷ややかな声音で龍之介さんに云う。




「やってみ給えよ____やれるものなら」


「……ッ。零細探偵社ごときが! ____我らに逆らって生き残った者などいないのだぞ! それに、A嬢は首領のご息女であり____」


「知ってるよ。その位」


「然り。外(ほか)の誰よりも貴方はそれを悉知(しっち)している。____元マフィアの太宰さん」




(治さんは私の元上司ですよ)
(は……)
(Aは……太宰さんの幹部補佐だった)

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