――#真夜中の淑女 ページ1
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ポートマフィア幹部補佐・躑躅ヶ咲A。
その真の素性を知るのは限られた一部の人間のみ。
「もうそろそろ、懲りたら如何かね」
『ッ……厭、だっ!!』
「それならもう一本行こうか。さぁ、九本目だ」
拷問部屋にはAの嗚咽と悲鳴、鷗外の声が響く。Aは“再教育”を受けていた。
時々挟まれる空白時間には中也と紅葉が部屋を訪れていた。
「いい加減、音ェ上げたら如何なンだよ」
「A……此れ以上は躰に障る。鷗外殿の云う事を聞かぬか」
『……』
「マゾかよ」
「何を待っておるのかは知らぬが、諦めた方が身の為じゃ。おぬしも判っておるだろう。のう、A?」
拘束されたAの左目は紅く染まり、頬は涙で濡れていた。腕には多くの注射の痕、傍らには自白剤などの空の注射器が幾つも転がっていた。
『……【
その時、Aの濡羽色の髪が一気に銀白色に染まり、両目が淡い紅となって中也と紅葉に目を向けた。
躰には植物の紋様のような黒い痣が
「A、手前何して……」
「中也、下がるのじゃ」
Aは軽々と両手足の鎖を引き千切ると、ぺたりと素足でその場に立って見せた。
『眠たい……』
「A……?」
『ちゅーや、さん……。私、すごく、眠たくて……』
ふらりと歩き出したと思えば、中也の目の前で倒れた。中也は咄嗟に抱き止めたが、彼女は眠っていた。
「鷗外殿を呼んでくる。中也はAの部屋に運ぶのじゃ」
「わ、分かった……」
Aの姿が変わった事を知った鷗外は、やっとだと云わんばかりに口角を上げて妖しく笑った。
――パンドーラーは白銀の異能力者だ。
医療班によって治療を施され、身綺麗にされたAはベッドの上で死んだように眠っていた。
黒い植物の紋様は消え去り、姿だけがそのままだった。
「首領……此れは何なンですか」
「彼女の真の姿だよ。此れが彼女の異能の本質さ」
「Aは、何なのじゃ……」
「パンドラの匣、とでも云うべきかな」
その後、目覚めたAの功績は右肩上がりを続けた。単身で敵組織に潜り込み、一晩で敵を血を流さずに殲滅し、特務課では「あれは何だ」と大騒ぎになる一方だった。
十六歳の誕生日を迎えた日の深夜。
Aは再びポートマフィアから姿を消した。
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綺弌(プロフ) - 秋野楓さん» コメント有難う御座います。双子ちゃん人気で嬉しいです! 夢主ちゃんと誕生日が同じとは……! Sanatorium.は現在パート4まで、また番外編の受け付けもしています。これからも頑張って行きますね〜 (2018年11月27日 0時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
秋野楓(プロフ) - 初コメ失礼します!夢主ちゃんと片割れくんのコンビ素敵ですね!実は夢主ちゃんと同じ誕生日でびっくりしてコメントしてしまいました…笑これからもがんばってくださいね! (2018年11月27日 0時) (レス) id: 0550af0881 (このIDを非表示/違反報告)
綺弌(プロフ) - Ratte*らてさん» コメント有難う御座います。キャラ誉めて頂けて嬉しいです! 日々、ゆっくりと頑張っていきます。 (2018年11月1日 22時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
Ratte*らて(プロフ) - いやー…夢主ちゃんも片割れくんも可愛いですねぇ…、癒しです。更新応援してます頑張って下さい!! (2018年11月1日 21時) (レス) id: 112e01abc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺弌 | 作成日時:2018年10月26日 3時