喧嘩 ページ48
私に反論されるとは思っていなかったのか、莉犬さんが驚いたように目を見開いた。
確かに彼の言う通り、私たちに出来ることはないかもしれない。
応援に向かったって、解決するどころか状況が悪化してしまう可能性がある。
ー−−だけど。私はそうまさん一人に責任を背負わせることが正しいとは思えない。
『そうまさんだけに対応してもらうということは、彼に全責任を押し付けると同義です』
莉犬「……言い方を換えればね」
『こちらに非がないと分かっているのに、一人が責められ続けるのは納得がいきません』
莉犬「君が納得しようとしなかろうと関係ないよ。俺らが首を突っ込んだところで何にもならないから」
落ち着いた雰囲気で話しているけど、イライラを抑えているのが伝わる。
スタッフルームの空気が凍り、誰もが口を開きにくいムーブが出来てしまったけど、
私はここで自分の意見を曲げるわけにはいかないと思った。
普段の私だったら譲れる場面であれば一歩引くけど、今回ばかりは譲っちゃダメだ。
そう直感し、私は莉犬さんを真っ直ぐ見つめた。
『……私はここに来たばかりで、まだまだ勉強しなきゃいけないことが沢山あります。
でも、それだけじゃ理不尽にキレられているのを知っているのに見て見ぬふりをする理由になりません』
莉犬「経験が浅いからこそ、下手に出ると火種が付くんだよ」
『___”経験”って、そんなに大事なものなんですか?』
一瞬沈黙した後そう質問を投げると、莉犬さんは”え”と声を漏らした。
確かに、経験がないよりある方がいいと思う。次に生かせるし、これからの人生で色んな経験は必要だ。
でも、経験があるからと言って、絶対に前と同じ方法で問題が解決するとは限らない。
予測不可能なことばっかり起きるし、私たちは目の前の出来事を追うだけでも力を使ってしまう。
大人は自分が面倒事に巻き込まれないために”経験則から言って”と豪語して動かないことが多いけど、
それは時に周囲の人を傷つける行為になることだってある。
『”前の経験からしてこういうとき変に行動しない方がいい”
正しいことを言ってるように聞こえるかもしれませんが、
これはただ「自分だけ」を守るための防御にすぎません。
他人に面倒事を押し付けて、自分は安全地帯に逃げている。
お店のこと、そうまさんのことを気遣っているようで、中身は自分を守ることしか考えてないんです』
67人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨萩さくり(プロフ) - ゆーちゃんさん» コメントありがとうございます!名前変換はストーリーの都合上、ちょっと難しいですね……。ご期待に沿えずごめんなさい💦 (12月23日 9時) (レス) id: c9a476ef2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆーちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します、!素敵な作品ですね!!一気読みしちゃって二周目入りました(*´꒳`*) あとよかったらでいいのですが、続編もすべて名前変換使えるようにしてくださるとありがたいです……。ワガママ言ってごめんなさい、! (12月23日 4時) (レス) @page8 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
雨萩さくり(プロフ) - むむさん» アハハ、のほほんとしながら読んでくださるときがあるんですねw いつも読んでくださり本当にありがとうございます! (12月19日 13時) (レス) @page49 id: c9a476ef2d (このIDを非表示/違反報告)
むむ - 更新お疲れ様です(*´꒳`*)さくりさんの作品は本当にのほほんとして呼んでも面白いし,普通に読んでも面白いので本当に応援してます(*´꒳`*) (12月19日 12時) (レス) id: bee7f787c2 (このIDを非表示/違反報告)
雨萩さくり(プロフ) - さまーさん» ホントだ!全然気付かなかった、教えてくれてありがとう(笑) (12月18日 17時) (レス) id: c9a476ef2d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨萩さくり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/n15a76543b1
作成日時:2023年10月18日 7時