令和の巫女が、大正で剣士に転職する話。【鬼滅の刃】

第八話『無意味な願い』 ページ9

あぁ...お願いやめて。炭治郎を殺さないで。

炭治郎に鬼の手が降りかかる度、炭治郎が傷つく度に、そう強く願う。そんな事、無意味なのに。



『...っあ、』



炭治郎が、鬼の手に弾き飛ばされて木の幹に頭を打ち、地面に倒れ込むのが見えた。

やだ、そんな。お願い炭治郎、起きて。殺されちゃうよ。速く、速く！！

異形の鬼が、言葉は聞こえないけど薄笑いを浮かべたのが分かる。助けなきゃ、と木の影から飛び出そうと腰を上げたけれど。


ーーーー私が前に出て、何の意味がある？


私は刀もろくに使えないし、怖がりだしビビリだし。炭治郎に助けてもらってばっかりで、彼の足を引っ張ってしまっている。

そんな私が前に出たって...返り討ちに会うだけじゃないか。炭治郎を助けられない。



『...っ、』



無理だよ。私は...炭治郎みたいに優しくなけりゃ強くもないもの。こんなに無力な私が今更悔しい。

私に何ができる？私は役に立てる？誰かの為に行動できる？

...分からない。そんな難しい事考えたってしょうがない。でも、今私が分かるのは。



『...やいやい、この...えっと...ハゲ頭ｧｧｧｧｧｧ！！！』

「...あ"？」



ーーー炭治郎を助けたい、ただそれだけだから。




ーーーーーーーーー

ーーーーー



「...誰に向かって口を聞いてる、貴様」

『はっはっは残念でした。ここにはハゲはあんた一人しかいないわ！！』

「俺はハゲじゃねｪｪｪｪ！！！」

『ハゲやわ増毛しろよ』



いや、何て呼んだらいいか分からなかったもので。いいじゃん、もう適当にハゲ頭で。実際ハゲてるしさ。素直に認めなよ。

するとハゲ頭は、忌々しそうに顔を歪めて私を睨みつけた。背筋が凍ってしまいそうな尋常じゃない量の殺気。視線だけでこっちは気を失ってしまいそうだ。



「...ん？何だお前、手足が震えてるじゃないか。本当は怖いんだろう？な、そうだろう？」

『こっ...こここここ怖くないわこんなののの』

「説得力ないなお前」



...まぁいい、とハゲ頭はグニャグニャ揺れるたくさんの手を私へと向ける。死ね、と口が動いた気がし...いや、動いた。

無数の手が、凄いスピードで私へと向かってくる。どうしよう...こんなの無理だ。やっぱり。

カッコつけたけど、結局できなかった。やだなダサい...こんな無力な自分が嫌い。もうすぐ私は死ぬ。炭治郎を巻き添えにして。



《...貴方に秘められている力を目覚めさせて》



...、え？

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