83 革命の狼煙 ページ33
翌日、私たちはまた帝国学園にいた。
急な呼び出しに、まさか何かされるのではないかとメンバーは困惑している。音無先生も何も聞いていないらしい。
「心配するな、これは鬼道からの招待なんだ。俺たちに会わせたい人がいるそうだ」
唯一、円堂監督が明るくそう言った。
鬼道──鬼道有人。帝国学園総帥であり、十年前イナズマジャパンを優勝へ導いた天才ゲームメーカー。
てっきり帝国はフィフスセクター側についたのだとばかり思っていたが、事態はそうシンプルではないらしい。
入口まで辿り着くと、帝国のコーチとキーパーが出迎えてくれた。
「ここから先は他言無用で願いたい。そこの君……撮影禁止だからね」
そう注意されたのは茜。悲しげな様子で、手に持ったカメラを懐にしまったのだった。
＊
無機質な長い廊下を歩く。その雰囲気に呑まれ、速水なんかは怯えっぱなしだった。
目的地までの道中で円堂監督は、帝国の監督から聞いたという話を教えてくれた。
昨日の試合。帝国側では、チームに潜むシードを炙り出す作戦が立案されていたこと。
勝敗指示が出ていなかったため、元々の帝国選手は久々の雷門との試合に本気で挑めた。
しかしシードは違う。試合展開で押され焦りが生じ、余裕のない動きになっていた、と。結果四人のシードを見つけられたらしかった。
「俺は君たちに感謝している。あの熱さ……あれこそがサッカーだ」
帝国キーパーが、どこか晴れやかな表情で言った。
しがらみもなく、ただ勝利を追い求めてがむしゃらに戦えた。その尊さを感じたのだろう。
それから私たちはエレベーターに乗り、地階へ向かった。
「これから君たちに会ってもらうのは、我々レジスタンスの中心人物。俺たちはこの方たちと共に、今のサッカー界に革命を起こそうと考えているのだ」
帝国コーチの言葉に、エレベーター内はどよめく。
「革命？」
「またでかい話になってきたな…」
「何を驚いている？ 君達は既に、革命の為の戦いを始めているじゃないか」
革命の為の戦い。それはつまり、勝敗指示に逆らって本当のサッカーを取り戻すという、今までの私たちの道筋のことだろうか。
やがてエレベーターが目的地に到達した。ポン、という電子音が響き、扉がゆっくりと開いていく。
扉の前にいたのは、帝国の鬼道監督と──
「久遠監督？！」
栄都戦の後異動となった、久遠監督だった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月15日 9時
