14 刺客の参入 ページ14
翌日は始業式だった。もちろん朝練はあるわけで、サッカー棟内の第一グラウンドに集まったのだが。
ファースト九人、マネージャーが一人。
やっぱりサッカー続けます──そう言って戻ってくる人がいるかとも思ったけど、現実は甘くなかった。
「入部希望者、どれくらい来ると思いますか」
「あんな騒ぎがあった後だ。今年はちょっと読めないな」
霧野の問いに、三国さんが冷静に答える。
校舎で見かけた入部テストのビラも、間に合わせのシンプルなものだった。
道行く生徒も、どこか冷やかしの目でそれを流し見ていたように感じる。
「神童……なんで昨日、あんなこと言ったんだ」
「……やる気だけじゃ、どうにもならないこともある」
──『お前たちはもう来るな』。
あれは今思うとひょっとしたら、神童なりの配慮だったのかもしれない。
新入生を巻き込む訳にはいかない。だからわざと突き放すようなことを？
しかしあの二人は、そう言われたくらいで素直に諦めるようには見えなかった。
「残ったこの九人で、雷門サッカー部をなんとかしていかなくちゃ……」
「十人ですよ」
高めに蹴り上げられた神童のパス。それを突如現れた紫色の影が奪い、ゴールへダイレクトシュート。流れるような見事な動き。
──剣城だった。
突然の闖入者に、その場の誰もが唖然とする。
観客席から乾いた拍手の音がして振り向くと、そこには理事長と校長がいた。
「剣城くんはサッカー部に入ることになった」
メンバー総入れ替えは免れたものの、監視役がつくということか。
昨日あんな滅茶苦茶やられた相手に対し、形式的とはいえ同じチームとして接しなければいけないなんて。
「よろしくお願いします──キャプテン」
芝居がかった口調でそう言った剣城は、ゆっくりと神童に歩み寄る。
そうしてそのまま、剣城へのユニフォーム授与が行われることになった。
どこの部活でもあるだろう、ありふれた光景。ただこれほど剣呑な雰囲気の授与式はそうそうないだろう。誰もが険しい顔をしている。
「さあ、剣城くんにユニフォームを」
理事長に促され、神童はファーストチームのユニフォームをゆっくり剣城へ差し出す。
しかしその腕ははっきりと目に見えてわかるくらい震えていた。
剣城は神童の厳しい視線など意に介さず、あろうことか──手の甲でユニフォームを払い除けた。
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キメラ(プロフ) - 充滞さん» 充滞さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても光栄です、励みになります！ マイペース更新ですが見守っていただけると嬉しいです。 (2022年5月24日 21時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - キャラがとても公式よりで、とてもドキドキしました！主人公が抱く神童への劣等感、羨望を感じます。木から落ちる主人公を剣城が受け止めるシーンにときめきました。この小説を作ってくださりありがとうございます (2022年5月23日 11時) (レス) @page49 id: 7d360b94a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月3日 23時
