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指が首の左側で止まり、少し強く押される。
痛みは感じられないがただただ怖かった。
「あはは〜!ドクドク言っとる〜!怖い?怖いの?」
「やだ、こわ、い」
「ガチガチになってしまって可愛えなぁ〜!」
無邪気な笑みも、ただ私を痛ぶる為だけの加虐心からくる笑みなのだろうか、と考えると怖くて怖くて仕方が無い。
そう言えば、さっきの人は。
私の友人は。
「う、うらたさん!助けてください!!お願い!助けてッ!」
「あーぁ、無駄やで。言うたやん。この紅茶とキャンディ作ったのうらさんやって」
「う、ぁ……」
よいしょ、と私の腰から手を回し、そのまま私を肩に担ぐようにして持ち上げられる。
その担ぎ方に優しさなんて微塵も感じられず、ただ私を“モノ”としてしか扱っていなかった。
「いやだ、離して!話してよ!」
「まぁ落ち着いてや〜!皆に見せるの勿体ないなぁ」
皆だとか、見せる、だとか。
そんなのどうでもよかった。
ただ逃げなきゃ、その想いだけが頭をぐるぐると支配する。
嫌だ、どこに連れて行かれるの。
嫌だ。怖い。
赤色の髪をした彼は、テーブルから離れて、少し小さめなどこの家にでもありそうな扉に近付いていく。
嫌、嫌。
身体を動かして抵抗したくとも、そんなこと出来るはずも無かった。
カチャリとそのドアが開く音がする。
身体に力が入らないせいで、私が見えるのは彼の背中と足元だけ。
その足はコツコツと音を鳴らして階段を降りて行く。
「地下、……?」
「あー、分かる〜?せやで!地下に行くねん!」
「いや、なんでも言うこと聞く。聞きます。聞きますから、だからお願いします、嫌だ、連れてかないで下さい、」
「なんでも言うこと聞いてくれるん!?じゃあまずは地下に行こうな〜!」
逆効果でしかなかった。
こんな状況で何でも言う事を聞く、だなんて言うのはおかしいとは分かっていた。分かっていながらも、それを言うしか無かった。
だって、それ以外にもう方法は無いから。
「つーいた!」
着いた、だなんて言った所は私に見えている限りではただ薄暗い場所だった。
地面もあまりちゃんと見えない。
それに、少し肌寒くてジメジメとした空気が漂っている。
ガチャガチャと音が聞こえて、けれど、何が起こっているのかは分からない。
「よし!…手錠と足枷は〜……」
呑気に歌でも歌うかのような言葉に私は絶望することしかできなかった。
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ちょこ - 終わってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2021年6月8日 18時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 皇咲鈴音さん» びっくりしました誰かと思いました笑 みかんさんありがとうございます!本当嬉しいです大好きです(;;) (2020年10月28日 23時) (レス) id: 9beb0497a0 (このIDを非表示/違反報告)
皇咲鈴音(プロフ) - すごい名前になってますがTwitterのみかんです( めっちゃめっちゃ内容好きです!! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 72e21fad30 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - 物語の構成が好みすぎました!!更新おまちしております!!! (2020年3月27日 16時) (レス) id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - nanaseさん» そのように言って頂き嬉しいです…!コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2020年3月8日 6時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:もう既に血が足りない
作成日時:2019年10月19日 15時