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「ひい"っぁ、」
「ん、…はぁ、」
内腿に鋭い、突き刺すような酷い痛みが走って、私の背中は大きく仰け反った。
はっ、と声にならない声で息をして、生理的に滲む涙も、ガクガクと震える口も。煩わしかった。
何で、こんな所で知らない男の人に太腿を噛みつかれているのか。
しかも、普通の噛まれ方じゃない。
絶対に血が出ているし、何かが刺さっている感覚がある。
「んっ、あま、ふっ」
「いたぃ……っ、」
「んん、っ」
じゅるり、と時折血を吸うかのような音がする。
厭らしい音がじゅるり、ぴちゃり、と。
そして、紫色の髪の毛が涙で滲む視界にぼやけて映り込む。そんな彼の声は恍惚としているかのような、幸せそうな、楽しそうな、艶やかでありながら喜々とした声であった。
彼が何をしているのかは全く見えない。けれど、太腿の感覚で分かる。
牙を二本。突き刺されて、そうして血を吸われている。
噛まれている部分が熱く熱く熱を持って、舌が私の太腿で蠢く。
私の血を味わうかのように、私の皮膚に触れる舌の感覚が何だかくすぐったいような、変な感覚。
「んっ、っあぅ」
「気持ちよく、なって、来た?」
「し、らないっ、」
腰の辺りがビクビクと痙攣をして、私の涙は止まることを知らなかった。
これが快感なのか、痛みなのか、何なのか分からない。ただただ、何か分からない感覚と恐怖に耐えることしかできない。
紫の髪色をした彼は未だにじゅる、と音を立てて私の血を吸って行く。
何で、私がこんな目に。
やがて、つぷ、と音がして私の太腿から牙が抜かれる。
短いようでとてつもなく長く感じた時間はただ私が痛みに耐えるだけの時間だった。
これからもこんなことが起こるかもしれない、と考えると気が遠くなる。
私の姿を見た紫の彼は、ニヒルに笑みを零して一言。
「やっぱ可愛えな、美味いし」
嫌悪感と怒りで何も返せなかった。
私は思い切りそんな彼を睨め付ける。
「怒ってる?そんな姿も可愛えんやけどなぁ…あ、そうや。まだ俺のこと普通の人間と思ってる?」
「は、どういう……」
「血を吸ったのに気付かへんの!?ホンマに!?こんな純粋な人間居るんやな〜」
一人でケタケタと楽しそうに笑うが、私からすれば何が楽しいのかも、どこにそんなに笑う要素があるのかすらも全く分からないし、理解したくもない。
こんな酷い人間のことだから、笑うツボもずれていることだろうし、そんなことを理解してしまったら私までこんな残酷な最低な人間に成り果てるようで嫌だ。
___俺ら吸血鬼やで
なんて。
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ちょこ - 終わってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2021年6月8日 18時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 皇咲鈴音さん» びっくりしました誰かと思いました笑 みかんさんありがとうございます!本当嬉しいです大好きです(;;) (2020年10月28日 23時) (レス) id: 9beb0497a0 (このIDを非表示/違反報告)
皇咲鈴音(プロフ) - すごい名前になってますがTwitterのみかんです( めっちゃめっちゃ内容好きです!! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 72e21fad30 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - 物語の構成が好みすぎました!!更新おまちしております!!! (2020年3月27日 16時) (レス) id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - nanaseさん» そのように言って頂き嬉しいです…!コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2020年3月8日 6時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:もう既に血が足りない
作成日時:2019年10月19日 15時