云 ページ7
『中也』
「…」
『ねぇ中也ってば』
「…」
このやり取りをしてもう何度目になるだろうか。ガリガリと書類に確認のサインを殴り書きする中也は、何時もは私が呼べば顔を上げるのに、今は聞こえないとでもいう様に無視をして仕事をする。因みに今やっている仕事は別に至急の物でもない、何の変哲も無い部下からの報告書の確認だ。
中原中也という男は実に短気で面倒臭い。そして謝っても直ぐには許さない。現に今も私に対し起こっており、こうやって無視をしている。
こうなれば少なくとも今日は口を利いてくれないだろう。
何故、こんな事になってしまったのか。
____遡る事30分程前____
「あーーー!!!」
中也の声が、隣である私の執務室にまで聞こえてきた。
驚いた私は何事かと思い隣にある製氷室へ行くと、中也がワナワナとした様子で冷蔵庫を開けていた。
『…どうしたの中也』
冷蔵庫を開けてワナワナする人間が現実に居るのかと思い乍ら中也に問いかけると、怒った様な、泣きそうな、そんな複雑な顔をして振り向いた。
「お……俺の買ってきておいたプリンが無くなってる…!!」
『は?』
耳を疑った。
厭、真逆五大幹部様がプリン如きでそんな取り乱す何て誰が思い付くだろうか。
『大の大人がプリン如きでそんな取り乱して如何すんのさ』
溜め息混じりで呆れ乍らそう云うと、ピクッと中也が反応した。
「プリン如きでだと?」
その様子は、何故か怒っている様だった。
「あのプリンは食べたら背が伸びるっつぅ幻のプリンなんだぞ!!」
『否、其れは嘘だと思うけど』
此奴は本当に子供か。そんな話有る訳無いじゃないか。
『もう子供じゃないんだからそんな言葉を鵜呑みにしないでよ』
「煩え!背が高ェ手前には背が低い奴の気持ちなんか判んねェだろうなァ!!」
『はぁ!?…って一寸待ってよ!』
ヅカヅカと製氷室から出て行った中也を私は追いかける様に出て行った。
14人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りん(プロフ) - この作品、何度読んでも良いです。泣けます。 (2018年5月30日 23時) (レス) id: 0f68341c00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:豆猫 | 作成日時:2018年3月14日 7時