よんページ目 ページ9
もし、私に『死』という選択肢が出てきたら。
延命、なんてことはしないでほしい。
ただ、最期のわがままを認めてくれるなら、最期はあなたと一緒にいたい。
他でもないさかたんと最期を一緒に過ごしたい。見とってほしい。
******
「そ、ですか。」
あの事故から15日。医者から言われていた運命の日から1日だけ過ぎた日。
もう目覚めない彼女に対して、究極の選択がやってきた。
『もう、Aさんが目を覚ますことはないでしょう。このまま延命するか、それとも……』
「…答えは、決まっています。」
彼女の両親は、彼女からの手紙ですべての選択を俺にゆだねてくれている。
ありがたいような、申し訳ないような…でも、彼女の気持ちを最優先にするあたり
彼女の両親だなぁと思う。
「延命なんてせず、このまま逝かせてあげてください。」
それが、彼女のノートに書かれていた最期の望みだから。
最期まで、やると約束したから。
「なぁ、Aー…もう、お別れなんやな。」
出会った頃よりかなり細くなってしまった、Aの腕を取り手を握る。
暖かい、まだ生きている証拠なのに。
彼女の体は、もう生きることができないなんて悲しい矛盾が。
「…俺、最期までノートに書いてあることやったで…なぁ…なぁ…！！」
話しかけても、手を握っても反応してくれないけど。
ぽたぽたと彼女の手に、体に涙が零れ落ちても何も反応がないけど。
ただ生きている、それがどんなに幸せなのか。
今、身を持ってそれを知ってしまった。悲しい、残酷な……現実。
「なぁ、今にも起きそうなのになぁ…」
覚悟してきたやろ、こうなるって前から分かってたやろ。
そう自分に言い聞かせようとする理性は今回は働いてくれなくて。
感情の制御ができないから、涙はどんどん流れていて。
「さよなら、なんか。」
もう俺に、できることはないのだろうか。
彼女に最期……なんか、できることは。
「………あ。」
不意に、学生時代の思い出がよみがえる。
眠くて右から左に筒抜けだった教師の言葉が鮮明によみがえった。
『お亡くなりになられた仏様を最後に綺麗にするのも看護師の役目だ。』
「…そうや、まだできるやん。俺にしか、できひんこと。」
看護師免許どこ行ったやろ、とりあえずそれを探してもう一度ここに来よう。
大丈夫、涙は引いた。最期にできることが、見つかったから。
最期の2週間記録：4ページ目→←最期の2週間記録：3ページ目
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
や-さん(プロフ) - 涙がとまりません…とても素晴らしい作品です!! (2019年5月22日 3時) (
レス) id: ec5ca44496 (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - ボロ泣きしました…悲しくて悲しくて涙止まんないのに所々キュンキュン所あってまたすぐ悲しくなって後半は泣きっぱなしで読んでました…素晴らしい作品ありがとうございました…！ (2019年5月20日 11時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
Elice(プロフ) - 関西風しらすぅ@坂田家さん» 蒸しタオルのせて何とか回復してください…！こちらこそ読んでいただきありがとうございました！ (2019年5月19日 2時) (レス) id: 2363fe1fb7 (このIDを非表示/違反報告)
Elice(プロフ) - ゆきさん» 感動していただけてよかったです、ありがとうございました！ (2019年5月19日 2時) (レス) id: 2363fe1fb7 (このIDを非表示/違反報告)
Elice(プロフ) - 三日夜 雪璃さん» そう言っていただけて嬉しいです、読んでいただきありがとうございました！ (2019年5月19日 2時) (レス) id: 2363fe1fb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
