俺の全部を好きになって【角名倫太郎】

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試合が終わった。
練習試合とは言えどかっこよくて、凄かった。
小さめに拍手をしてそそくさと体育館を出ていく。
なんだか角名に会うとよくない気がして、それに素直に「行く」と言わなかったくせに、心からかっこいいと思った自分が恥ずかしくなった。絶対角名は気づいてる。




学校から家までの道をいつもより少しはやく自転車を漕いだ。家から学校まではめちゃくちゃ近い。「家から近いから」と決めた学校だ。
急ぐ理由もないのに、学校から、体育館から逃げるかのように早く離れた。


家についたのとほぼ同時にスカートのポケットに入れていたスマートフォンが震えた。
ロック画面には角名から『今日来てくれたんだ』とメッセージが来ていた。




「なんやねん、ちょっと意地悪」




思わず口に出てしまう。
メッセージからは「来ると思ってたけど」とニヤついている角名の顔が浮かんだ。


『別に』と返そうとして手を止める。

かっこいいと心の中では思ってたのにそれは感じ悪いんちゃうん？

相手は彼氏、これは素直に言うべきだと結論づけ、思った通りに『かっこよかった』と返信した。
後から見て少し恥ずかしくなった。3ヶ月前に別れた彼氏にならきっと『別に』か『おつかれ』とだけ返していただろう。




自室に入るとスマホからメッセージのマヌケな通知音が鳴った。さっきマナーモードを解除したけど、その通知音が嫌でまたマナーモードに設定する。バイブレーションつきならカバンにでも入れない限り気づくやろ。



角名からのメッセージを見ようとして、指を止める。
角名からの返信はちょっとだけ遅かった。いつもなら送ったら遅くても30秒で返って来るのに。
「ちょっとだけ間を開けて返信しよう」と思い、2分ほど時間を開ける。




開くと角名から『好き、ありがとう』とメッセージ。
角名は普段から愛情表現が凄いがやっぱりここまではっきりと言われるとドキッとする。

何か返そうかと思ったけどやめた。




「アホ角名」




誰も聞いてないのにまた少し恥ずかしくなって呟いた。

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